抽象概念の3要素

抽象概念の3要素は、概念の名前、概念の定義、概念の実例だ。この3要素に注目しておくと抽象概念の学習がやりやすくなる。

抽象概念には必ず名前がつけられる。その概念を一言で言い表すためだ。名前がつけられた概念はそれによって一つの思考の対象としても扱うことができるようになる。「論理」という概念は一言では言い表されないような幅広い内容を持っているが、「論理」という言葉で表すとあたかもそれが一個の物であるかのように扱える。したがって、「論理を論じる学問がメタ論理である。」というふうに「論理」を一つの対象として指示することができる。

このように、概念は名前によって一個の対象として扱われるため、他の概念との関係を考えることができる。したがって、ある抽象概念を学習しようと思うならば、その名前の概念が他のどのような概念と関連しているかを考慮する必要がある。

次に、抽象概念の定義だが、これは、一般に抽象的な表現で分かりにくいことが多い。それは、その定義が具体的な内容ではなくスキーマを記述しているからだ。言い換えると、具体的なものではなくそれを入れる入れ物の構造を記述しているのだ。したがって、その入れ物に具体的なものを入れてみないと、抽象概念の定義がなにについて述べられているのかよくわからない。具体例の中に定義で述べられたスキーマが適用できるのを確認してはじめてその実際的な意味が分かる。

最後に、抽象概念の実例だが、抽象概念を理解するためにはその元となる実例は必須だ。しかし、その実例のどのような構造を抽象されているのかは実例からだけでは分からない。比喩を使って推論された議論を読むときの危うさは、筆者がどのような抽象のしかたでその比喩を用いたかを、読者が正確に読み取れない場合が多いからだ。古典の注釈を読むとかえって理解できなく感じる場合があるのは、古典の場合用語の明示的な定義がないため、注釈者の観点で解釈されてしまい、論理の整合性がとれないように見えることがあるからだ。

抽象概念の定義と実例の間には、定義を満たす適切な実例が与えられており、実例からの抽象が定義のスキーマのパターンにきちんと適合していることという相互依存的な関係がある。抽象概念においてその意味を理解することが大切だといわれながら、抽象概念の意味とはなにかということになると曖昧な記述になってしまうことが多いが。それは、抽象的概念の意味というのは、定義のスキーマと実例との間の相互作用のような両者の間を行ったり来たりする思考過程によって明らかになるという抽象概念の性質のためだ。

抽象概念の名前によってその概念の位置づけを知り、定義と実例の間の相互作用を追跡することによってその概念の意味を知ることができるようになる。
by tnomura9 | 2009-05-04 16:53 | 考えるということ | Comments(0)
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