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思考力

多くの人が自分の思考力を鍛えたいと思っているだろう。

管理人もその一人だ。しかし、思考力とは何なのだろうか。思考力を測る基準とは何なのだろう、また、どうすれば思考力を高めることができるのだろうか。本を読んだり、問題集を解いたりすることはたしかに思考力を高めるための手段だ。しかし、なぜ、それが思考力を高めることになるのだろうか。言い換えると思考力の定義とは何なのだろう。

端的に言うと、思考力とはあるものをそれと等価な別のものに置き換える能力のことだ。

思考力は普通に考えると、問題解決能力のことを指すと思われる。たとえば、携帯電話をもっと軽く薄くしたいという問題提議がなされたら、それを思考力を使って解決する。だが、その問題解決の方法を具体的に見て行くと、今ある携帯電話の機能を保存しながら、素材や部品やレイアウトを置き換えていくという作業になる。携帯電話の機能を保存しながら、それと等価な別の部品を使った携帯電話に置き換えるのだ。

難しい本を読んで理解するのも、思考力の働きだ。しかし、これも本という文字記号の羅列をそれと等価な頭の中のイメージやモデルに置き換えていく作業なのだ。

また、今までになかった全く新しいものを発明する場合でも、それは既存のものの機能を改良したり、材料や部品として利用しており、既存のものを新しい使い方に置き換えているのである。

このように、思考力を等価置換としてとらえることで、どうすれば思考力を伸ばすことができるかが見えてくる。あるものをそれと等価な別のものに置き換える能力は次の3つの能力にかかっているのだ。

第一、は自分の頭の中のデータベースを充実することだ。何かを何かと置き換えるためには、置き換えることのできるものについての情報が多ければ多いほどいい。したがって、速読の技術や他人との交流によって要素知識をどんどん増やしていくことが思考能力を高めるための手段になる。

第二は、あるものとあるものが交換できるかどうかを探索する推論の能力だ。あるものを別のものに置き換えるとどういうことがおきるかということをすばやく推論できなければならない。つまり、AならばBであるというような推論をすばやく遂行できなければならない。

その要件としては、まず、論理に熟達していること。「逆また真ならず」というような格言や、A⊃B と ¬A∨B が等価であるというような知識は正確な推論をすばやく行うのに有用だ。第2には将棋の手を読むときのように、複雑な推論の木構造を次々にたどることができる能力を養うことだ。ある仮定の下に起こりえる結果は非常に多くなる場合が多い、それらをすばやく評価し見込みのある選択枝のみを見つけ出す能力が必要になってくる。

第三は、抽象化の能力だ、見かけ上異なっているように思われる事例の中に潜む、共通な構造を見抜く力だ。それができれば、一見何の関係もないようにみえるものを使って問題を置き換えることが可能になる。抽象化の能力を磨くには、数学がいいが、何も高等数学のようなものでなくてもいいのだ。中学の幾何の問題も、基礎的な代数の問題や、順列組み合わせの問題でも、個々の事例の差異の中に潜む共通の性質を発見するという気持ちで解いていくと。抽象化の効果が感覚的につかめる。コンピュータのプログラムができれば、SICPを読むと良い。抽象化というあいまいな概念をプログラムという検証可能な形に実体化させてくれる。

これらの、データベース力、推理(論理)力、抽象化の能力を目安とすれば、自分の思考力を測ったり、また、鍛えたりするためには何をすればよいのかが見えてくる。
by tnomura9 | 2008-03-09 08:57 | 考えるということ | Comments(0)
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