ストレスを溜めやすい思考パターンのひとつに、二者択一の考え方がある。全てのことを、「あれかこれか」、「右か左か」、「良いか悪いか」の二者択一に割り切って考える考え方だ。分かりやすい考え方だが、その実、葛藤を起こしやすいのだ。
たとえば血圧が高い人がいる。二者択一の考え方でいけば、高血圧は「悪い」。血圧を下げるためには薬を飲まなければならないが薬には副作用がある。薬の副作用は「悪い」。こういう考えかたをすると、血圧が高いのは「悪い」が薬を飲んで副作用を起こすのも「悪い」、どう転んでも「悪い」というディレンマに陥らざるを得なくなる。実際には血圧を下げる効果と副作用の危険性を天秤にかけて副作用が強ければ他の薬に変えるし、副作用が無視できるくらいならその薬を使うというようなグレイゾーンで物事を判断するのが良いのだ。 だが、なかなか実際にはグレーゾーンで考えることは難しいのだ。「あの上司は悪い」とレッテルを貼ると、一挙手一投足が嫌になってくる。「あの上司は悪いところがあるが、良いところもある。」とはなかなか考えられないのだ。 この二者択一の考え方は、実は、神経の生理学的性質が関係しているのだ。子供に絵を描かせると必ず輪郭で絵を描く。しかし、輪郭線は自然界には存在していないものなのだ。輪郭は、網膜の細胞の周辺抑制という生理学的なメカニズムで発生するものなのだ。神経は自然界に存在するグラデーションを情報処理することによって輪郭線を検知している。本来連続的なグラデーションしかないものを、神経回路が輪郭線を検知することによって「あれかこれか」の二者択一を発生させているのだ。 神経の処理は合目的的なもので、おそらく情報の圧縮を行っているのだろうと思う。しかし、そのために、気をつけていないと、思考が簡単に二者択一のジレンマに陥ってしまう危険性があるのだ。 「自分は不運だ」という考えの中に、この二者択一が含まれていないか検討する必要があるのではないだろうか。
by tnomura9
| 2005-05-28 16:36
| 幸福論
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