脳幹部の中央にある縫線核という所にあるニューロンには変わった性質がある。縫線核にあるニューロンの数は比較的少数なのだが、大脳皮質をはじめ脳全体に軸索を送っているのだ。また、このニューロンはトリプトファンという必須アミノ酸からセロトニンという神経伝達物質を合成するので、縫線核から脳全体へセロトニンが送られることになる。また、セロトニンの神経伝達物質としての働きも特異で、それはシナプス後神経を発火させるというより、その発火のしやすさを調節するような働きをするのだ。
正確に書こうとすると却って分かりづらくなってしまうが、要するに、脳のごく一部のニューロンが脳全体にセロトニンを送って脳全体の活動をコントロールしているということなのだ。そして、脳全体にどう影響しているかというと、不安感などのストレス反応を緩和し、痛みの感覚を減少させ、快・不快の感情を沈静化させるのである。つまり、縫線核のセロトニン神経は、心を平静にさせる「不動心」の中心なのだ。 セロトニン神経は、目が覚めているときは活動し、寝ているときは活動しない。また、目が覚めているときも2Hzの規則正しいインパルスを発生している。さらに、セロトニン神経は痛みなどのストレス刺激には全く反応しない。その興奮を強めるのは、咀嚼、呼吸、歩行などの規則的なリズム運動と、2400ルクス以上の明るい光である。 したがって、セロトニン神経の活動を高めることができれば、脳の不動心を鍛えることができる可能性がある。科学的な精神修養だ。座禅の科学的な根拠でもある。座禅の規則的な呼吸法がセロトニン神経の活動を高めていたのである。 また、念仏やロザリオの祈りで悟りを開く人があるのも理解できる。それらの祈りの規則的なリズムがセロトニン神経を賦活化したのだ。 しかし、座禅のような特別な方法を用いなくても、セロトニン神経を賦活する方法がある。明るい光の中でリズム運動をすればよいのだ。朝、屋外を20分くらい散歩するだけでいいのだ。あるいはもっと簡単にチューインガムをかむだけでも良いのだ。 セロトニン神経についての詳しい説明は東邦大学医学部生理学第一講座のホームページに載っている。また、関西テレビの「発掘!あるある大辞典」にもとりあげられているようだ。 科学的に平常心を養う時代がやって来たのかもしれない。
by tnomura9
| 2005-05-26 22:33
| 幸福論
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