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データベースとしての脳

考えるということを、「思考対象のシステム」、「意識」、「データベースとしての長期記憶」の三つのモジュールにわけることで、思考の操作を整理して理解できそうだ。

まず、思考の対象はシステムなので、要素とその相互作用からなる構造としてとらえなければならない。思考の対象を理解するということは、そのモデルを脳の中に作成するということだ。その際に、要素間の相互作用は、要素と要素をつなぐ脳の中の連想という形でモデル化される。

思考対象のモデルは、長期記憶の中に形成されるが、意識が扱える情報量が少ないため、一気にすべてを意識にのぼらせることはできない。記憶を行うときだけでなく、想起するときにも連想を手がかりにして少しずつ取り出す必要がある。思考の対象のシステムは意識のズームイン、ズームアウトによって想起する必要があるのだ。

このように、長期記憶はデータベースと似たところがある。すべての情報があらかじめ見えているわけではなく、連想というクエリーを使うことによってデータを取り出さなければそれを見ることができないのだ。長期記憶から情報を取り出すときに重要な役割を果たすのは、連想の方向性をコントロールした強制連想だ。強制連想は、主キーと副キーのAND検索として行うことができるが、脳がコンピュータと違うのは副キーにスキーマを使う意味検索ができるところだ。

このように思考のモデル化を行うことで、思考にとってもっとも重要なのは連想それも連想の方向をコントロールする強制連想であることが分かる。要素と要素がどういう性質の連想で結び付けられているかを意識しながら連想することで、脳の中の思考対象のシステムのモデルが効率的に形成される。

具体的なトレーニングとしては、参考書を読むときに要素とその相互作用としてのシステムとしてとらえるようにすること。読んだ後、個々の要素に焦点をあてて、どういう連想で他の要素との結びついているかを想起すること。システム全体としてどういう構造になっているかを簡単に図示してみることなどが考えられる。

脳が連想を基本原理とした汎用のシミュレーション機械であること。また、意識の扱う情報量は少ないが全ての思考活動がここで行われなければならないこと。長期記憶が連想をクエリーの手段とするデータベースであることと考えることによって、思考をどのように訓練すればよいかの方向性が見えてくる。
by tnomura9 | 2007-10-16 08:01 | 考えるということ | Comments(1)
Commented by tnomura9 at 2007-10-30 07:11
トラックバックありがとうございました。
自分中心の世界モデルと、世界中心の世界もモデルが勝手に行動していて辺縁系の意識の領域で相互作用しているというのは面白いですね。脳も一種のコンピュータなのだなと感じさせられます。
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