頭のいい人は世界の全てを自分で理解しようとして失敗する。
組織を運営する人は、組織を動かすことによって世界を動かしているような気になってしまうが、その組織を支える専門分野の知識のほんのひとかけらすら理解していないのを自覚しない。 自分の小さい頭の中に全宇宙を収めることなど到底不可能なことを知ることは、知恵のはじめだ。 スペースシャトル・チャレンジャーを爆発させたのは、思ってもみなかったフロリダの気温の低下だった。小さな頭の中に全てを収めることができないことを知っていることこそが、破局の兆候を見逃さないための特効薬ではないだろうか。 高度医療や、企業間の競争や、スペースシャトルの打ち上げのような、成功させるための要因が大規模で複雑でかつ個々の要素の安全域が狭い難しい計画では、わずかな判断ミスが重大な失敗を招いてしまう。したがって、このような企画を成功させるための判断を一人のリーダーにだけ頼るのは危険で、むしろ、どんな思いがけない事態にも対応できるような、高機能の組織化が要求される。 そのような組織はシステムとしての能率だけでなく、それを構成する人間の行動パターンも織り込んだものでなくてはならないし、また、透明性の高い情報交換が必要になるだろう。また、そのなかにITを組み込むのは必須となるだろうが、IT技術自体の脆弱性を理解したものでなくてはならない。 そのような組織では、例えば、イザヤべンダサンの「日本人とユダヤ人」の中に書かれている例のように、「全員一致の案件は棄却する」というような行動をとることが必要かもしれない。 フィンランドメソッドの面白いところは、個人の思考の流れをマインドマップによって視覚化することによって、皆で共有することができること。簡潔な、分かりやすい文書を作成すること。文章の構成を統制し、情報が確実に伝達できる文書を作成すること。作成された作品に対し10の良いところと悪いところを上げ、バランスの取れた検討が自動的に行えること。議論のルールを決めることによって能率の良い議論を進行させることなど、高機能組織に必要な要素技術がふんだんに盛り込まれていることだ。 フィンランドメソッドを子供の国語教育のユニークな方法としてだけでなく、高機能組織を運用するためのベーシックな訓練として捕らえることも必要な気がする。 現在の組織のありかたは、長い人間の歴史の中で淘汰されてきたもので、かなりの実効性を持っているが、技術の進歩によって、それだけでは足りなくなっているのではないだろうか。実践するに足る高機能組織の理論的研究が必要だと思う。
by tnomura9
| 2006-12-18 22:02
| 考えるということ
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