IP3受容体が面白い。
IP3とはイノシトール3リン酸のことだが、IP3が小胞体膜のIP3受容体に結合すると、一気に小胞体内のカルシウムが細胞質に放出されて、筋肉収縮、分泌、細胞増殖、発生のコントロール、転写、シナプス可塑性など、多彩な細胞機能が活性化される。 IP3受容体は約2,700アミノ酸からなり、分子量30万を超えるサブユニットの4量体として、小胞体上に存在し、カルシウム放出チャンネルとして機能する。また、カルシウムイオン、ATPをはじめとするさまざまな化学物質による動作の制御を受けるため、小胞体からのカルシウムイオンの放出は、ウェーブ/オシレーション、スパークなどの時間的・空間的パターンをとり、平滑筋のように、そのパターンによって動作が異なるものもある。 IP3受容体は、分子構造と機能の関連が次々に明らかにされており、それを見ると、つくづく生物の体というのは分子機械なのだなと思う。機械という意味は、形が機能を決定するという意味だ。アミノ酸の側鎖のリン酸化や脱リン酸化でたんぱく質の3次構造が変わって活性中心が露出することによって触媒機能が発現するところなどは、化学反応というよりは、機械のメカニズムを連想させる。 分子機械が普通の機械と違うところは、その部品の形が、たんぱく質の一次構造によって自動的に決定することだ。部品をプレスしたり削ったりしなくても、アミノ酸をつないでやりさえすればひとりでに部品の形が決定される。工作機械が全く要らないのだ。将来はアミノ酸のシークエンスを人工的に設計して、分子ロボットや、分子アクチュエータが作れるようになるのかも知れない。 また、これだけ分子機械が巧妙にできているのを見ると、これが、ポイントミューテーションのような偶然の力で作られたとは思えなくなる。進化が自然淘汰で起こったと考えるよりも、なにか、このような分子機械を改良し、それを次世代に伝えるための未発見の仕組みがあるのではないだろうかという気さえしてくるのだ。 イノシトール(Wikipedia) 細胞内カルシウムチャンネルのホットスポット構造 アービット IP3受容体チャンネルの構造 平滑筋とカルシウムイオン IP3受容体蛋白のAFM観察 カルモジュリン カルシウムイオンウェーブとIP3受容体のイメージング 生物の背と腹をわけるメカニズム カルシウムシグナル伝達の可視化 カルシウムシグナル 小脳形成に秩序をもたらす分子たち 神経成長におけるIP3受容体の役割 IP3受容体と外分泌機能 カルシウイオンダイナミクスと細胞モデル IP3受容体のmRNAの樹状突起への輸送 血管とカルシウム カルシウムポンプたんぱく質の立体構造 カルシウムポンプたんぱく質のゲートの開閉機構 カルシウムと私(トロポニンの発見者 江橋節郎教授の随筆)
by tnomura9
| 2006-09-23 14:13
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