ハードルを下げる

NHKの『ガッテン』で慢性疼痛の特集をしていた。はっきりした原因がわからないのに激しい痛みで苦しめられている患者さんが、脳を訓練することで痛みから解放されるという内容だった。

慢性疼痛ははっきりした原因もないのに激しい痛みを感じる病気だ。痛みの原因がないので原因対策では痛みはとれない。ところがそういう病気の人の脳の PET をとってみると大脳皮質の広範な領域で血流が低下している。一方脳の中心部の扁桃核というところは逆に興奮が見られるようなのだ。扁桃核は恐怖や怒りや不安といった感情に関係する神経の領域だ。この領域が興奮することで広範囲の脳の活動が低下し、それが痛みにつながっているらしい。

これとは別に脳の中心部の近くにある側坐核という領域は、快感や報酬と関連している。モルヒネや覚せい剤が効果を発揮するのは最終的にこの側坐核を刺激するからだといわれている。ところで、この側坐核は抑制性の神経線維を扁桃核に送っており、側坐核が興奮すると、扁桃核の活動が低下し、大脳全体の活動が増加する。したがって、側坐核を興奮させてやれば、扁桃核の興奮を抑えることで慢性の疼痛を緩和させることができる。

この側坐核は、しかし、簡単な方法で興奮させることができる。つまり、課題を設定してそれを達成したときの達成感を感じるとき、この側坐核が興奮しているのだ。

先ほどの慢性疼痛の患者も、小さな目標を設定しそれを達成したときの達成感を繰り返すことで側坐核を刺激し慢性疼痛から解放された。激しい腰痛に悩まされていた男性の患者さんは軽い筋トレを繰り返すことで筋トレをやり切ったという達成感を繰り返しているうちに腰痛がなくなってしまった。腰痛で歩くのも大変だった若い女性は階段を1段のぼるという課題から初めて、課題をクリアしているうちに2回まで階段を登れるようになり、スキップできるまでに腰痛が焼失した。激しい頭痛に悩まされていた女性は、書道をしている間は頭痛がないことに気が付き、意識的に書道をするうちに頭痛から解放された。

学習目標がうまく達成できないときは、ほんを読むのもつらくなるが、上手にハードルを下げることによって苦手感を低減できるようになるのではないだろうか。学習の技術にはモチベーションを保つための技術も含まれるのではないか。

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by tnomura9 | 2018-05-14 18:45 | 考えるということ | Comments(0)
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