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チア☆ダンを見た

福井商業高校チアリーダー部の情報を集めているうちに、映画『チア☆ダン』を見たくなって、ケーブルテレビでビデオをダウンロードして観た。

高校生を演じた女優たちが可愛くて、ダンスにも本気で挑戦していたのがわかって、これはこれで面白かったが何か物足りなかった。わかりやすくて楽しめたが、もう少し掘り下げたら感動的な映画になったかもしれない。

調べたチアリーダー部の創立の経緯は、明るく楽しい高校生生活とはかけ離れたものだったような気がする。作家がきちんと取材していればはっきりとこの物語の魅力に気が付いたはずだ。

ひとりの体育教師が部活の指導に苦労し、自信を失いつつある中でふと見かけた、朝のニュース番組。そこで紹介された全米大会で優勝した日本のチアリーダー部の演技。何かが教師の中で生まれた。

新しい赴任地で、教師は伝統あるバトン部をチアリーダー部へ変更することを提案する。晴天の霹靂のようなバトン部をチアリーダー部に変更したいとの顧問の要求に振り回されていく周囲の先生や生徒や父兄の戸惑いと反発。地獄先生と陰で言われるほどの顧問の強烈なパーソナリティと情熱はしかしその圧力にめげなかった。

全米大会での優勝というありえない目標を突きつけられたうえ、その指導の厳しさに反発して50名いたバトン部員が1年生の9名しか残らなかった。なんと、チアリーダー部創設を主張した顧問自体が、実は少林寺拳法の有段者でダンスとは無縁だったのだ。厳しい指導に反発した学年の部員が全員退部し、職員室の顧問の目の前で机の上に次々にユニホームを置いて帰ったときの顧問の孤独。

この9名の1年生がなぜ周囲からの批判に耐え顧問の指導についていったのかも取材すると面白そうだ。

初心者ばかりの部員には最高の専門的な指導の必要性を感じた顧問の努力で、東京から専門のインストラクターを月に1回招いて指導を受けることができるようになった。顧問の厳しい指導の下、その月1回の講師の指導をビデオに録り何回も再生して自分たちで練習し、与えられた課題を消化していった部員たち。また、真剣に努力するが故の部員たちの相互の反発。

徐々に力をつけながらも大会で実績を上げられない部員たち。揺れる部員たちの心とそれを支え続ける顧問。それは「人は変われる」をモットーに生徒たちの脳を騙して「私はできない」から「私はできる」に変化させるものだった。

その部員たちの苦闘を見ながらも、入部してきた新入生。生徒たちの意識の変革が始まった。「できない」は「きっとできる」に変わり、全員の心が一つになって成長のスパイラルが動き始める。補欠は1人も作らないとの顧問の熱意が達成した全員がセンターの技量。本大会前のセンター2人の故障のピンチと、急遽編成替えをしたメンバーでの逆転勝利。ありえないと思っていたことが実現していく。ついに達成した全国大会の優勝と全米選手権への参加資格。そうして、初出場にしてまさかの優勝。

ドラマのラストは優勝の演技を邪魔を入れずそのまま再現したらどうだろうか。たった2分半だ。しかし、それはダンスを知らない教師のあり得ない夢から始まった3年間の皆の苦悩と苦闘とから生まれたメタモルフォーゼなのだ。

これだけの素材が揃っているのだ。TVシリーズになるそうだが、仲良し学園ドラマとはまったく違う骨太の『チア☆ダン』を作ってみたらどうだろう。

強烈な個性の賢者の石に触れて、想像すらできなかった変貌を遂げる子どもたちの、類まれな物語を堪能したいものだ。

by tnomura9 | 2017-11-01 20:34 | 話のネタ | Comments(0)
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