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素朴集合論の限界

いま、集合 a1, a2, a3 のみからなる集合の集合 A = {a1, a2, a3} を考える。すると A のすべての部分集合は、P(A) = {{}, {a1}, {a2}, {a3}, {a1, a2}, {a1, a3}, {a2, a3}} となる。ここで A -> P(A) の関数 Ψ を考える。すると Ψ(a1), Ψ(a2), Ψ(a3) はそれぞれ集合 a1, a2, a3 の外延になる。例えば Ψ(a1) = {a1, a2}, Ψ(a2) = {a2, a3}, Ψ(a3) = {a1} のように Ψ を定める事ができる。

しかし、A の要素だけでは、Aの冪集合の全てに対応させることができない。そこで A を拡張して A' = {a1,a2,...,a5, a6} を考えるとこれは A = {a1,a2,a3} の全ての部分集合を A' の要素で表すことができる。だが、この場合にも A' の要素だけでは A' の全ての部分集合に対応させることができない。

それでは A の要素を無限集合にまで拡張したらどうだろうか。A の要素は無限にあるのだから、A のどんな集合も表すことができるようになるのではないだろうか。しかし残念ながらそうはならない。Aは加算な無限集合であるが、Aの冪集合 P(A) の濃度は非可算である。したがって、AとP(A)の全単射をつくることは不可能だ。

ゆえに、素朴集合論では全ての集合を記述することは不可能なのだ。

なぜ A が加算無限になってしまうかというと、上のやりかたでは A の要素数を増やすときにシステム的に段階的に網羅していけるからだ。しかし、同時に、このときシステム的に A の冪集合の要素数は A の要素数より必ず大きくなる。従って A の要素数を無限に多くしていっても。どの段階でも A と P(A) の全単射をつくることはできない。

無限集合とは無限にある要素の全体というよりは、要素を無限に作り出す時のルールが一定であるということだ。整数と偶数がどちらも加算無限集合なのは、整数を 0, 1, 2, ... と並べていくルールがあるのと、偶数を 0, 2, 4, ,., と並べていくルールが呼応しているからだ。

無限集合を有限集合の意味の集合と考えることはできない。無限集合を規定するものはその要素を規定するルールであって、その集合の要素全体ではないからだ。

by tnomura9 | 2017-05-22 07:31 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)
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