突然、『アリーテ姫の冒険』ダイアナ・コールス著、グループ・ウィメンズ・プレイス訳 を読みたくなったので、本棚を探してみたが見つからなかった。
高い本ではなかったので Amazon で取り寄せようと思ったら、絶版だった。原著の『The Clever Princess』 Diana Coles 著も絶版だった。 何年も前に子供の英語の教科書に乗っていたのを読んで面白かったので、本屋で見かけた時に日本語版を買っていたのだ。本の帯のキャッチフレーズは「待ってばかりのお姫様はもう古い。」だったような気がする。イギリスの小学校の先生が書いた童話だ。主人公のお姫様のキャラクターが普通の童話と違う。 アリーテ姫は好奇心が強く、絵も、乗馬も、料理も、掃除も得意だ。15歳の時にはお城中の本を読んでしまった。あまりの賢さに、伝統的な教育をしようとする家庭教師と衝突し、「かしこい王女は嫁にいけない。」と心配した父王が連れてくる王子達は姫の賢さに撃退されて逃げ去っていく。 そんな姫を父王は高価な宝石と引き換えに求婚に来た魔法使いに売ってしまう。しかし、この邪悪な魔法使いはアリーテ姫に殺されるという予言を受けていて、姫を殺そうと思って城にやってきたのだ。彼は、自分が与える3つの試練を姫が解決できなかったら殺しても良いという許可を王様から得る。心配した魔女が3つの願いを叶えることのできる指輪を姫に渡すが、魔法使いは姫を城から連れだして館に帰ると、姫を地下室に閉じ込めてしまう。 話は地下室に閉じ込められたアリーテ姫が魔法使いの与える難題をどう克服していくかということを軸に進んでいくが、その問題の解決法が実にユニークだ。また、3つの願いがあっとおどろくような使い方で役立てられる。白馬の王子様を待つ、ただ美しいだけ(アリーテ姫は美しいとは書かれていない)、優しいだけの王女ではなく自立した女性としてのアリーテ姫の活躍が痛快だ。それも、男性化した女性ではなくあくまでも普通の女性の性質をふんだんに持ちながら、それゆえに難題が克服されていく。 また、好みは分かれるだろうが、人生の残酷な面もしっかりと描かれていて童話の持つ暗黒面を描くことも躊躇されていない。 絶版だったので残念で、アリーテ姫の書評を書いたブログを読んでいるうちに、本の内容を思い出した。 ネタバレすると面白くない本なのでこれ以上書評で書けないが、一度は読んだほうがいい本だ。再版はしないのだろうか。 こんな面白い本を英語の教科書に載せてくれた編集者に感謝。
by tnomura9
| 2012-03-19 23:16
| 話のネタ
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Comments(3)
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tnomura9 at 2012-07-06 20:05
酒井徹さん、トラックバックありがとうございました。
皆が当たり前と思っていることについて、違った観点から本当に大切な物を見極めようとするアリーテ姫の視点が、物語全般から感じ取られて感銘を受けますね。しかし、アリーテ姫が自分の奥さんだったらちょっと辛いところがある気がします。そういう見方で見ると、彼女に翻弄された魔法使いに何となく親近感が湧いて来ました。本当に弱いのは男のほうではないのかと。
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鵜
at 2018-08-01 14:49
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tnomura9 at 2018-08-14 14:51
> 鵜さん、コメントありがとうございました。
ぜひ復刊してほしいですね。男性と対等に活躍するために男性化する というのでなく、女性らしさを保ちながら毅然として自己を確立する ヒロインは他にみられないと思います。しかし、悪役の魔法使いにも 何故か男の哀愁のようなものを感じられて憎めないのは何故でしょう。
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