明治8年7月のある日、浅草の三社祭から帰った「おふた」という芸者が往来に近い縁端で湯巻姿になって肌をさらしながら涼んでいたところを、通りがかった警官に違式違反で拘引された。
芹沢一也著「狂気と犯罪」によると、幕末から明治にかけて庶民は普通に裸だったらしい。汗をかく仕事のときはほとんど全裸の状態だったし、風呂屋の扉は開けっ放しで、風呂上りはフリチンで着物は手に持って帰っていた。女性のほうも涼んだり、洗濯するときは当たり前に肌脱ぎになっていたのだ。 しかし、来日した外国人には非常に奇異に見えたらしく、日本政府は社会から裸を追放しようと法律を作って取り締まったらしい。同書には東京府が裸体を禁じた政令の引用がある。 同府下賤民ども、衣類着ず裸体にて稼方いたし、あるいは湯屋へ出入り候う者も間々これあり。 威張った書き方だが、裸は一般的なことだけどと断ったり、仕事で不便だろうけれどせめて半纏か腹掛けをしてくれと頼んだり、書いた人の人柄が偲ばれる。 外国人はびっくりしただろうが、ほとんど裸で生活していたご先祖様のおおらかさが嬉しい。博士だろうが大臣だろうが裸になりゃ一緒じゃないかというような、日本的民主主義が感じられるような気がする。世界で一番共産主義なのは日本だそうだが、こういうところに根っこがあるとしたら面白い。 湯巻というのが分からないので調べたら腰巻のことだった。湯巻を検索していたら銭湯についての記事を見つけた。面白かった。水の話 特集風呂
by tnomura9
| 2005-07-16 08:10
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