フィルターとしての肺

肺は呼吸器だ。肺の毛細血管を流れる静脈血は肺胞から酸素を取り入れ、二酸化炭素を肺胞に排出する。

ところが、肺の毛細血管は人体の中でもアンギオテンシン変換酵素が集中している場所だ。血液中のアンギオテンシンIというペプチドは、アンギオテンシン変換酵素によってペプチドを切断されることによってアンギオテンシンIIというペプチドに変換され、これは血管を収縮させて血圧を上げる作用を示す。

つまり、静脈の中にある血圧を上げる物質はそのままでは作用がブロックされた状態にあり、肺を通過することによって始めて作用を発揮することができるようになる。アンギオテンシンを動脈にだけ作用させるためのうまい仕組みだ。

こう考えていくと、肺には血圧を調節するための生理活性物質を処理する酵素が集中していてもよい気がする。実際、カテコラミンを分解するMAO-Aという酵素が肺には高濃度に含まれているという。

内臓にはかならず毛細血管が存在する。血管は毛細血管に分岐することによって、その表面積が圧倒的に増大する。血液とそれを囲む細胞との接触面積が一気に増加することになる。従って、内臓はどれでも一種のフィルターとしての機能があると考えることができる。肝臓も腎臓も肺もフィルターとして一括してその機能を考えることができるのだ。

肝臓と内臓脂肪の関係は、門脈という解剖上の特殊性を考慮に入れないとその特殊性を考えることができない。しかし、逆に肝臓も腎臓も肺もフィルターとして統一して把握することによってそれらの臓器の機能に新しい見方を与えることができる。抽象化と具体例についての考察は互いに反対の方向性ではあるが、どちらも物事の本質を把握するための新しい見方を与えてくれる。
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by tnomura9 | 2010-09-25 23:20 | 考えるということ | Comments(2)
Commented by japis-loveliz at 2015-07-15 17:50
こんにちは。
肺動静脈瘻があると脳膿瘍が起こりやすい、ということを学び、肺はフィルターとしての役割を持っているんだ、と思って調べたら、ここへたどり着きました。
先生のおっしゃるように、そう考えると、内臓はどれも一種のフィルターかもしれませんね。
面白い知見を得ました。
これからも読ませていただきます^^
Commented by tnomura9 at 2015-07-15 22:07
japis-lovelizさん、コメントありがとうございました。内臓をフィルターと考えるやり方に興味を持っていただいて嬉しいです。フィルターの特徴と利点は溶液と接触する面積が圧倒的に広くなるということではないかと考えました。フィルターの前と後で血清の性質を劇的に変えることができます。これが全身のシステムの中でどのような意義を持っているのかわかりませんが興味深いと思います。コメントありがとうございました。こちらこそよろしくお願いいたします。
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