タイの通貨危機についてネットで調べていたら、クラウディングアウトの問題が引っかかってきた。
クラウディングアウトとは、 政府支出の拡大により、金融市場での政府の資金調達が増加(国債の発行増加)が起こると、資金が逼迫し、金利の上昇をもたらすことがある。この金利上昇は、民間部門の投資抑制につながってしまい、結果的に政府支出の拡大が民間投資の圧迫につながる。このような効果をクラウディングアウトと呼ぶ。 ということで、国債発行増加 -> 流通資金の不足 -> 金利の上昇 -> 民間部門の投資抑制(貸しはがし) -> 民間企業が資金調達ができないという連鎖が起き、財政出動が結局企業の資金調達にならないという現象らしい。 フーバー大統領はこれを恐れて緊縮財政をとり大恐慌をひきおこした。ケインズ経済学は、失業が多い時は必ずしもクラウディングアウトが起きないというモデルから大規模な財政出動を行い、恐慌から脱出することが出来た。 財政政策と、金融政策の効果は、このほかにも貿易や、為替制度の問題や、投機のための意図的な為替の操作の介入(タイの通貨危機)などの要因が絡んでいて、単純な予測ができないようだ。 日本でも財政、金融問題では政府が右往左往している様子が Wikipedia には記述されている。(Wikipedia クラウディングアウトより) 日本では、1990年代に財政赤字がクラウディングアウトを起こして民間投資を減少させたという見方もあるが、日本経済は構造的に貯蓄超過の状況にあり、この間も下がり続ける金利のもとで国債は消化され続けた。むしろ90年以降の財政抑制政策は「政官民癒着」にみられるモチベーションのクラウディングアウトに関わる問題や、不況による税収不足の一方で増大する社会保障費により償還資金の手当てのための借換国債の問題などが焦点となった。 これを見ると日本には財政政策に関する一貫したシンクタンクがないように見える。 経済の問題は、物理や化学と違って繰り返し実験して検証するということができない。そのため、さまざまなモデルがあってもどれが正しいのかを調べる手段がない。おまけに、仮説をもとに財政政策を行うと失敗したときの影響が非常に大きい。 しかし、大恐慌や、昭和恐慌など歴史を振り返ってみると似たような状況は繰り返し起きているように見える。ところが、数理的な問題を扱う経済学者は歴史が苦手だろうし、逆に歴史学者は数学が苦手かもしれない。また、数理モデルをコンピュータシミュレーションに落とし込むには、ITに詳しい人が必要だ。 財政の問題は専門の学際的な研究施設が必要なのではないだろうか。日本の財政政策が右往左往してその効果も合格点を与えられないのは、このような専門的な機関を活用できていないからのような気がする。 財政と金融に関する専門機関をぜひ設立するべきだ。しかし、古典経済主義とケインジアンのようにどちらが正しいと判定できないような場合が多いので、その専門機関では対立する主張をする複数のグループをつくりお互いに討論させる必要があるだろう。 変化する経済状況の中で、専門機関がたった一つの対処法しか提案できないというのははなはだ危険だからだ。 どちらにしても、日本は財政問題に専門家の頭脳を結集する機構がうまく働いていないような気がする。 政府の答弁も「借金が多いから」とか、「クラウディングアウトが起きるから」などの曖昧な根拠ではなく、「シンクタンクのシミュレーションではこうだ」などのように、判断の根拠を明示した発言がなされるべきではないのだろうか。
by tnomura9
| 2009-11-22 08:08
| 話のネタ
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Comments(1)
Commented
by
tnomura9 at 2009-11-25 15:19
紙幣廃止論さん、トラックバックありがとうございました。
ブログの過去記事も読ませていただきましたが、財政政策は本当に複雑で難しいですね。自分たちの生活に直結するのにどうすればいいのか判断できないということが多いことに今度の仕分け騒動で気がつきました。紙幣廃止論さんのブログを読んで勉強したいと思います。
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