幸せのニューロン

久恒辰博著 「幸せ脳」は自分でつくる 講談社α新書 によると、人間は幸せを感じるとき大脳辺縁系の帯状回前皮質が特に強く活動するそうだ。また、悲しい気持ちのときは帯状回後皮質が強く活動するらしい。

帯状回前皮質の第5層には特別大きなスピンドルニューロンという神経細胞があって、これが幸せのニューロンなのではないかということだ。

脳の活動の画像診断で注意しなければならないのは、SPECTやPETで活動が強いところでも本当にそこで幸せを感じているのかどうかは分からないということだ。これは、統計的に有意な相関があってもそれがそのまま直接の原因と断定することは出来ないということと同じだ。

しかし、脳の活動の画像化をしている研究者がALSで体も動かない、声も出ない人の脳をスキャンして意識があり、耳からの音に反応しており、外からの問いかけに脳の反応で返答しているのを見つけたという記事が朝日新聞に載っていた。さらに、その記事の中で、この研究者が脳の中を覗くことで個人のプライバシーまで覗いてしまうのではないかと思うときがあると言っていた。

脳の研究が進むことでより合理的に幸せになる方法も見つかってくるだろうが、心の中が読まれたり、心を操作されたりする危険性も発生してくるのではないだろうか。
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# by tnomura9 | 2005-07-20 23:49 | 脳の話 | Comments(0)

自己組織化

管理人が学生の頃、これからの生物学のフロンティアは神経生理学と発生学ではないかと思っていた。

この両者に共通するキーワードは自己組織化だ。神経はその複雑な構造を自動的に作り上げる。受精卵も卵割を繰り返しながらひとりでに各部の器官を形成してくる。これらは、精密な設計図によるというよりも、細胞間の相互作用から生じる自己組織化によって進行していくのではないだろうか。自己組織化は数学的には複雑系として扱われているようだ。細胞相互の局所的な、非線形の相互作用が大域的な振る舞いにある規則性を発現する。フラクタルが生物や自然を模倣するように見えるのも、生物が実際そのようなやり方で形態形成しているのかもしれない。

ところで、コンピュータと脳の比較がときどきなされることがあるが、脳と似ているのはコンピュータのハードウェアではなくて、むしろソフトウェアの方ではないだろうか。

脳は基本的にはパターンを処理するフィルターだ。感覚刺激が入力で、筋肉の動きやホルモンの分泌などが出力になるが、それは最末端の話で、脳の内部では単に入力される電気信号や化学刺激を処理して軸索群からの出力パターンに変換しているだけなのだ。

ソフトウェアもそうだ。センサーからの入力やモーターやビデオ画面への出力があるかもしれないが、基本的にはビットデータの入力がビットデータの出力に変換されるだけなのだ。そう考えると神経で見られるような自己組織化がソフトウェアのプログラムにも導入できるかもしれない。

コンピュータのブログラムが複雑になるにつれ、扱うデータが変数から構造体、オブジェクトへと組織化されていく。その先にはデータ自体が自立性を持って相互に通信するという形態があるのではないだろうか。そうして、局所的なプログラム同士の相互作用を定義することによって全体としての大域的な組織化が自然に出来上がってくるというようなプログラムも可能になってくるかもしれない。そのようなプログラムは分散処理をするコンピュータと相性がよいし、デバックに費やされる労力が少なくなるのではないかと思う。

管理人の考えていることは、ライフゲームに似ているなと思って検索していたら、セルオートマトンの専門家のセルオートマトンと複雑系というページを見つけた。Javaプログラムのデモがあってブラウザでそのまま見ることが出来る。(7月24日)
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# by tnomura9 | 2005-07-20 03:41 | 脳の話 | Comments(0)

やせ薬

セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み抑制剤は体重減少効果があるそうだ。

最初抗うつ剤として開発されたが、そちらのほうの効果は無く体重が減少したので、効能を体重減少に切り替えて開発したらしい。脳内の細胞外セロトニンとノルアドレナリンを上昇させることによって満腹感を亢進させ、また内臓脂肪を減少させる効果がある。副作用としては血圧上昇が見られるので、高血圧を合併している肥満の人は注意が必要だ。

欧米では既に販売されているようだが、日本では認められていない。

そのほかにも、いろいろなメカニズムで食欲を抑えたり、基礎代謝を亢進させる薬が目白押しで開発中らしい。効果があって、副作用の無い夢の痩せ薬が、普通に販売される日も間近なのではないだろうか。

しかし、皆が皆ナイスバディになってしまったら、面白くない気もする。
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# by tnomura9 | 2005-07-18 07:12 | 脳の話 | Comments(0)

おふた

明治8年7月のある日、浅草の三社祭から帰った「おふた」という芸者が往来に近い縁端で湯巻姿になって肌をさらしながら涼んでいたところを、通りがかった警官に違式違反で拘引された。

芹沢一也著「狂気と犯罪」によると、幕末から明治にかけて庶民は普通に裸だったらしい。汗をかく仕事のときはほとんど全裸の状態だったし、風呂屋の扉は開けっ放しで、風呂上りはフリチンで着物は手に持って帰っていた。女性のほうも涼んだり、洗濯するときは当たり前に肌脱ぎになっていたのだ。

しかし、来日した外国人には非常に奇異に見えたらしく、日本政府は社会から裸を追放しようと法律を作って取り締まったらしい。同書には東京府が裸体を禁じた政令の引用がある。

同府下賤民ども、衣類着ず裸体にて稼方いたし、あるいは湯屋へ出入り候う者も間々これあり。

右は一般の風習にて御国人はさほど相軽く申さず候えども、外国においては甚だこれいやしみ候より、めいめい大いなる恥辱と相こころえ我が肌を露し候うことは一切これ無くよし。しかるに外国御交際追々盛んに相なり、府下の儀は、わけて外国人の往来もしげく候ところ、右様見苦しき風習このまま差置き候うては、御国体にも相かかわり候うにつき、自今賤民たりとも決して裸体相ならず候う状、稼方につき衣類着し不便の者は、半纏または股引腹掛の内相用い、全身を顕わさずようきっと相慎み申すべし。


威張った書き方だが、裸は一般的なことだけどと断ったり、仕事で不便だろうけれどせめて半纏か腹掛けをしてくれと頼んだり、書いた人の人柄が偲ばれる。

外国人はびっくりしただろうが、ほとんど裸で生活していたご先祖様のおおらかさが嬉しい。博士だろうが大臣だろうが裸になりゃ一緒じゃないかというような、日本的民主主義が感じられるような気がする。世界で一番共産主義なのは日本だそうだが、こういうところに根っこがあるとしたら面白い。


湯巻というのが分からないので調べたら腰巻のことだった。湯巻を検索していたら銭湯についての記事を見つけた。面白かった。水の話 特集風呂
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# by tnomura9 | 2005-07-16 08:10 | 話のネタ | Comments(0)

チューリングの斑点

日経サイエンス8月号に、自己組織化する視覚チップの話が載っていた。この視覚チップを、人工網膜チップと結合すると、大脳皮質と同じような方位選択性ニューロンのカラム構造が自動的に発生する。そのメカニズムにチューリング機械で有名なチューリングの拡散波の理論を利用していると書いてあった。

そこで、「チューリング 斑点」で検索してみると、沢山出てきた。どうもチューリングの理論は、生物学や、発生学や、ナノテクノロジーなどで今盛んに研究されているらしい。

チューリングが何について理論を立てたのかと言うと、牛の斑点や、シマウマや熱帯魚の縞模様がどういう風にできるのかを説明する理論なのである。それによると、細砲どうしが化学物質をやりとりすることによる単純な相互作用が原因で、ひとりでに牛の体の斑点のような複雑な模様ができてしまうらしいのだ。

チューリングは1956年の論文で、生物の縞模様が、細胞から分泌される、発色反応の活性因子と、抑制因子の伝達速度の違いがあると、拡散する化学物質の波が発生し、それによる定常波によって安定に斑点や縞模様ができると述べた。縞模様は最初の細胞の特性の不均一性と、活性因子と抑制因子のバランスによって変化する。

チューリングの理論は次のような仮定からなっている。(www.nanoelectornics.jpより)

いくつかの隣接した細胞では物質の交換がある(拡散)。
それぞれの細胞では化学反応が進行している。
化学反応では活性因子(activator)Xの関与する正のフィードバック機構と、抑制因子(inhibitor)Yの関与する負のフィードバック機構が存在している。
抑制因子は活性因子よりも速く拡散する。

そうしてその相互作用は次の微分方程式で記述できる。

∂X/∂t = f (X,Y) + Dx2X

∂Y/∂t = g (X,Y) + Dy2Y


非線形なので解を求めるのは難しいがコンピュータシミュレーションすることができる。

ひょっとしたらチューリングの方程式は神経回路の動作機構のセントラルドグマなのかもしれない。大脳皮質は人間の脳の体積のほとんどを占めているが、その6層構造は驚く程均一だ。したがって、そのメカニズムも基本的には非常に単純な可能性がある。それが拡散波の理論だとしたら脳の機構の解明と応用が以外に早く実現するかもしれない。
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# by tnomura9 | 2005-07-13 08:00 | 脳の話 | Comments(0)

小檜山賢二の微細構造の庭園

昆虫ロボットをGoogleで検索していて見つけたサイト。アクセスしていたら、何を検索していたのかをすっかり忘れてしまった。とにかく美しくて、わくわくする。いや、わくわくして、美しい。

小檜山賢二の微細構造の庭園



とまれ、これで一日一記事はクリア!
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# by tnomura9 | 2005-07-11 21:44 | 話のネタ | Comments(0)

昆虫の脳

人間の脳細胞は140億くらいだが、昆虫の脳は100万くらいだそうだ。

それだけの脳で昆虫は、食物を探索し、生殖し、情報を交換し、社会を形作っている。神経回路の基本原理を調べるのは動物の脳より昆虫の脳のほうが便利なのではないだろうかと思って検索してみたら、まさにSFだった。昆虫の脳を模したロボットあり、マイクロマシンで自由行動をする昆虫の神経活動をモニターしたり、脳の秘密が完全に解明されるのも間もないのだろうか。

鉄腕アトムはまだ現れていないが、今まさに21世紀の世界なんだ。

昆虫の脳関係のリンク

筑波大学 神埼・神経行動学研究室
東北大学大学院 生命科学研究科
東京大学 分子細胞学研究所 高次構造研究分野

東芝のオンラインマガジン「ゑれきてる」
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# by tnomura9 | 2005-07-10 12:06 | 脳の話 | Comments(0)

骨折

熊のチンコには骨があるそうだ。人間のチンコには骨がない。

勃起したときは海綿体という静脈に血液がパンパンに溜まって大きくなる。静脈だけだとどんどん膨れていくので、結合組織という硬い線維が静脈の外側を覆っており、膨れすぎを防ぐと共に硬さを保っている。

ところが十分勃起して硬くなっていると、人間の骨なしチンコでも折れることがある。結合組織が断裂してしまうのだ。そうなるとチンコは直径が握りこぶし大に膨らんでしまう。手術して結合組織を縫ってやらないと大変なことになるそうだ。

チンコが骨折した友人を見舞いに行くときは何と言うんだろう。

「やあ、具合はどう?」
「ありがとう、腫れも減って、痛みも治まったよ。」
「たいへんだったね。でも、どうして折れてしまったの?」

とは言えないなあ。
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# by tnomura9 | 2005-07-09 21:27 | 話のネタ | Comments(0)

脳の科学のリンク集

最近、脳に興味が出てきて、いろいろと検索しているが、脳の科学についてはインターネット上に専門の研究者の良質のサイトが多いのにびっくりさせられた。たいへんな作業だと思うが、脳の研究を一般に広めることの重要性を感じてのことだと勝手に解釈している。実際、テレビで報道される殺人や、校内暴力、家庭内暴力、引きこもりなどの事件は、脳についての研究成果を活用することで、違った解決法が見つかるのではないかと思う。

脳の科学のリンク集

慶応大学医学部解剖学教室の電子教科書
神戸大学電子図書館の解剖学講義ノート
東邦大学医学部統合生理学教室のシステム神経生理
京都大学霊長類研究所の脳の世界
岡崎国立共同研究機構 生理学研究所
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# by tnomura9 | 2005-07-08 19:09 | 脳の話 | Comments(2)

ニューロン

神経回路を構成する基本単位はニューロンである。ニューロンは信号の伝わる順に樹状突起、細胞体、軸索、シナプスで構成されている。軸索を信号が伝導するときはパルス状の電気信号であるインパルスとして伝わる。軸索を伝わる信号はデジタルなのである。軸索末端はインパルスによって刺激されて化学物質が放出され、次のニューロンのシナプス後膜を刺激して膜電位を興奮させたり抑制したりする。この部分はアナログである。

何故ニューロンは樹状突起に入力されたアナログ信号をわざわざ軸索でデジタル化し、軸索末端で再び化学物質というような速度の遅い伝達手段にアナログ変換するのだろうか。それにはいろいろな理由があるだろうが、まず第一に軸索を伝わるインパルスは、樹状突起の電位をそのままアナログで伝達するよりは、信号の減衰がなく、また、ノイズにも強いということである。また、信号を途中で増幅する必要がないので機構が簡単で、消費エネルギーも少ないのである。

また、なぜ神経インパルスをシナプスでわざわざ速度の遅い化学物質に変換するのかというと、ひとつはインパルスにデジタル化された信号をアナログ化するためである。したがって、ニューロンは基本的にアナログコンピュータなのである。つまり、樹状突起への入力もアナログであり、シナプスでの出力もアナログなのである。実際、シリコンチップ上に網膜の回路を再現した人工網膜は、アナログコンピュータである。

軸索のインパルスをシナプスで化学物質に変換するもうひとつの利点は、ニューロンの入出力応答特性を伝達物質を変更することによって簡単に変えることができるということである。たとえば、シナプスで放出される化学物質がアセチルコリンであれば興奮性の信号となり、GABAであれば抑制性の信号となる。また、同じ興奮性のアセチルコリンとセロトニンとを比べると前者のほうはすぐに代謝されてしまうが、セロトニンは分解速度が遅く両者の効果の消退の時定数が異なる。

ただ、伝達物質の種類が必要以上に多すぎるようにみえるが、ひょっとしたら発生の過程で神経がふさわしい相手とシナプス結合するためのマーカーのような役目もあるのかもしれない。

動物のさまざまな行動を発現させるのはニューロンの回路であるが、ニューロン単体でも既にいろいろな情報処理が行われているのである。
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# by tnomura9 | 2005-07-07 07:45 | 脳の話 | Comments(0)