全称命題の真理表

命題論理では含意の真理表は次のようになる。

A | B | A -> B
T | T | T
T | F | F
F | T | F
F | F | F

A や B は特定の命題を表しているのではないのでこれらは命題変数と呼ばれる。従って、真理表では含意 A -> B の真偽は原子命題 A と B の真理値の組み合わせで決まる。

ところで、領域 D についての命題は領域 D の対象 a, b, c, ... と述語 A, B, C, ... の組み合わせ、たとえば A(a) で表せる。また対象の部分を変数にした A(x) は命題関数とよばれ、領域 D の対象を引数にとり、命題を返す。命題関数 A(x) を別の見方からみると、これは領域 D の対象と述語 A で作られる全ての命題を表しているとも考えられる。これは、上の命題論理の命題変数と同じ意味であつかう事ができる。従って、一階述語論理の含意の真理表はつぎのように作ることができる。

A(x) | B(x) | A(x) -> B(x)
T | T | T
T | F | F
F | T | T
F | F | T

この真理表の作り方は、命題論理の真理表と全く変ることはない。命題変数 A(x) は領域 D について真の場合も偽の場合もあり、命題変数 B(x) についても同様だ。

しかし、一階述語論理には量化子を使った命題がある。たとえば、∀x.(P(x) -> Q(x)) のような全称命題だ。このばあい全称命題 ∀x.(A(x) -> B(x)) の真理値は、領域 D の全ての対象についての命題変数 A(x) -> B(x) の真理値のパターンによって決まる。すなわち、A(x) -> B(x) の真理値が領域 D の中で T でも F でも取ることができるときは ∀x.(A(x) -> B(x)) の真理値は F である。したがって、全称命題 ∀x.(A(x) -> B(x)) の真理表は次のようになる。

A(x) | B(x) | A(x) -> B(x) | ∀x.(A(x) -> B(x))
T | T | T | F
T | F | F | F
F | T | T | F
F | F | T | F

この真理表における ∀x.(A(x) -> B(x)) の真理値は個々の A(x) と B(x) の真理値の組み合わせで決まるのではなく A(x) -> B(x) が領域 D 全体についてとり得る真理値のパターンによって決まる。すなわち、領域 D の全対象について A(x) -> B(x) の真理値のとり得るパターンが T, F, T, T であるとき、∀x.(A(x) -> B(x)) の真理値は F である。

しかし、領域 D の全ての対象について A(x) と B(x) の組み合わせの全てのパターンすなわち (T, T), (T, F), (F, T), (F, F) が現れるわけではない。たとえば、A(x) が真ならば B(x) は必ず真であるというような述語間の関係が存在するとき上の真理表は次のようになり、∀x.(A(x) -> B(x)) の真理値は上の真理表とは異なって T になってしまう。

A(x) | B(x) | A(x) -> B(x) | ∀x.(A(x) -> B(x))
T | T | T | T
F | T | T | T
F | F | T | T

このように全称命題の真理値は、個々の命題変数の真理値の組み合わせではなく、領域全体についての命題変数の真理値のパターンで決まる。

このため、全称命題の真理表については命題論理の真理表とは異なる注意が必要になる。命題論理の真理表では複合命題の真理値は要素的な原子命題の真理値で決定できるため、すべての場合に同じ真理表で対応できた。しかし、全称命題については、量化子のつけられた命題変数の、領域 D 全体における真理値のパターンで真理値が決まる。したがって、領域 D における命題変数の真理値のパターンいかんによっては、全称命題の真理値が異なってしまう。

たとえば全称命題 ∀x.A(x) の場合、領域 D において A(x) の真理値が T と F の両方をとり得るのか、T だけしか取らないのか、F だけしか取らないのかの3つのパターンがある。そうして、それぞれのパターンでこの全称命題の真理値はかわってくるので、それぞれの真理表を作らなければならない。しかし、領域 D における A(x) の真理値のパターンはこの3つだけなので、3つの真理表を作成することで、∀x.A(x) についての一般的な議論をすることができる。

以上の議論については全称命題について述べたが、存在命題の場合も同じようなやり方ができる。いずれにせよ、一階述語論理であっても命題論理と同じように真理表による分析はできるのだ。真理表を作ることができるということは、一階述語論理の性質を真理表を具体的に作成することで議論することができることを意味する。一階述語論理につきまとう抽象的な印象を随分和らげることができる。

例として ¬(∀x.A(x)) と ∃x.(¬A(x)) が同値であることを証明してみる。まず、A(x) が領域 D の対象全体について真理値を T も F もとり得る場合の真理表は次のようになる。A(x) の真理値は T と F の両方が存在するので ∀x.A(x) の真理値は F である。従って ¬(∀x.A(x)) の真理値は T である。一方 A(x) の真理値のうち A(x) が F になるものが存在し、その時 ¬A(x) は T になるので、∃x.(¬A(x)) の値は T である。すなわち、¬(∀x.A(x)) と ∃x.(¬A(x)) は同値である。

A(x) | ¬A(x) | ∀x.A(x) | ¬(∀x.A(x)) | ∃x.(¬A(x))
T | F | F | T | T
F | T | F | T | T

上では、領域 D について A(x) が T と F の両方の値を取る場合について述べたが、一般的な議論のためには、領域 D について A(x) が T の値しか取らない場合と、A(x) が F の値しかとらない場合も考えなくてはならない。

先ず、A(x) の値が領域 D において T の値しか取らない場合は A(x) の値は常に T なので、¬(∀x.A(x)) は F になるが、このときは ¬A(x) の値は常に F なので∃x.(¬A(x)) の値も F になり両者の真理値は一致する。

A(x) | ¬A(x) | ∀x.A(x) | ¬(∀x.A(x)) | ∃x.(¬A(x))
T | F | T | F | F

次に、A(x) が常に F となる場合は次のように ¬(∀x.A(x)) と ∃x.(¬A(x)) の真理値は T となるが、この場合も両者の真理値の一致がみられる。

A(x) | ¬A(x) | ∀x.A(x) | ¬(∀x.A(x)) | ∃x.(¬A(x))
F | T | F | T | T

このように領域 D における A(x) の可能な真理値のパターンで3つの異なる真理表の作成が必要になるが、どの場合にも ¬(∀x.A(x)) と ∃x.(¬A(x)) の真理値は一致するので両者は同値であると結論づける事ができる。一階述語論理には、量化子を使った命題があるからといっても、これを真理表で議論するのは不可能ではないし、難しくもない事がわかる。


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# by tnomura9 | 2017-09-03 22:04 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

一階述語論理と真理表

命題論理には真理表がある。これを使うと複合命題の真理表が機械的に計算できる。たとえば含意の真理表は次のようになる。

P | Q | P -> Q
T | T | T
T | F | F
F | T | T
F | F | T

真理表の利点は命題の真理値の機械的な割り当てで複合命題の真理値が計算できることだ。同じような定理を公理と推論規則から証明するのはかなり骨が折れる。命題論理学が分かりやすいと感じるのは真理表が寄与するところが大きいのではないだろうか。

しかし、一階述語論理には真理表がない。∀x. (P(x) -> Q(x)), P(a) が真ならば、Q(a) が真であるというような推論も真理値表が使えず。公理からの推論規則による証明が必要になってくる。そこで、論理にも真理表があれば便利だろうと思ったので考えてみた。一回述語論理の真理表による推論は、領域 D のモデルを使って行う。

対象の有限集合である領域 D を考える。領域 D の要素である対象 a, b, c, ... には述語 A, B, ... で表される性質を考えることができる。対象 a と述語 A の対は命題を作る。命題 A(a) は対象 a が A という述語の性質を持っているときに真である。そうでないときは A(a) は偽となる。述語 A に領域 D のすべての対象を割り当てて命題 A(a) が真になる対象のみを集めると述語 A の真理集合 A* ができる。A* は D の部分集合である。したがって真理集合は領域 D のべき集合の要素である。このべき集合を真理集合族と呼ぶことにする。

命題 A(a) の真理値と a ∈ A* の真理値は一致する。したがって A(a) と a ∈ A* は同値であり後者を命題と考えることができる。対象を変数で表した命題 A(x) は述語が A である命題全般を表す。述語 A を領域 D のすべての対象に適用したとき、領域 D の要素の数だけの命題ができるが、A(x) はそれらの命題の一つを表していると考えられる。つまり A(x) は述語が A であるような命題の命題変数だ。

A(x) は命題変数なので真理表をつくることができる。原子命題変数 A(x) と B(x) から複合命題 A(x) -> B(x) を作ることができて、それについての真理表を作ることができる。この際に A(x) と B(x) は同じ対象を表していると考えることにする。命題変数 A(x) と B(x) から作られる A(x) -> B(x) の真理表は次のようになる。これは命題論理学で使われる真理表と意味は同じである。

A(x) | B(x) | A(x) -> B(x)
T | T | T
T | F | F
F | T | T
F | F | T

ここで A(x) -> B(x) が常に真であるという仮定をする。A(x) と B(x) が互いに自由に真理値をとれる場合はこのようなことは起こらないが、A(x) が真の時は必ず B(x) も真であるというような、述語 A と B の間に関連性があるときは、そのようなことも起こりえる。その場合の真理表は次のようになる。

A(x) | B(x) | A(x) -> B(x)
T | T | T
T | T | T
F | T | T
F | F | T

ここで、述語 A を充足する対象 a を取り出して命題 A(a) を考えてみる。この時命題 A(a) の真理値は真である。また、含意 A(x) -> B(x) が恒真命題であると仮定する。すると次のような真理表ができる。

A(a) | B(a) | A(a) -> B(a)
T | * | T

B(a) の真理値が分からないが、それは上の含意の真理値表から推論することができる。すなわち A(x) と A(x) -> B(x) がともに真になるのは B(a) の真理値が T の時だけだ。したがって、この真理表は次のようになる。

A(a) | B(a) | A(a) -> B(a)
T | T | T

したがって A(x) -> B(x) が常に真、すなわち、全称命題 ∀x. (A(x) -> B(x)) が真の時は、A(a) が真ならば B(a) も真である。これを真理集合を使って表現すると、

a ∈ A* ならば a ∈ B*

である。この条件を満たすどのような対象を a として持ってきても上の関係は成立するから、述語 A の真理集合と述語 B の真理集合は包含関係にある。すなわち、

A* ⊂ B*

である。

もうひとつ例を考えてみよう。命題変数 P(x) について次のような真理表を作ってみる。

P(x) | ¬P(x) | ∀x. (¬P(x)) | ¬(∀x. (¬(P(x)))
T | F | F | T
F | T | F | T

この真理表は P(x) が真になったり偽になったりする条件下では ¬(∀x. (¬(P(x))) は常に真になることを示している。この真理表で ∀x. (¬P(x)) の真理値の求め方は特殊だ。この命題の真理値は ¬P(x) の真理値の列が全て T の時だけ真になる。この真理表では T と F が出現するので ∀x. (¬P(x)) の真理値は常に偽になる。

これは P(x) が真にも偽にもなる場合は成立するが、P(x) に制限があって次の真理表のように P(x) が偽の値しかとらないときは真になる。

P(x) | ¬P(x) | ∀x. (¬P(x)) | ¬(∀x. (¬(P(x)))
F | T | T | F

そこで存在命題 ∃x. P(x) について考えてみる。この命題は P(x) が真となる場合が少なくとも一つは存在すると真になる。したがって真理表は次のようになる。

P(x) | ¬P(x) | ∀x. (¬P(x)) | ¬(∀x. (¬(P(x))) | ∃x. P(x)
T | F | F | T | T
F | T | F | T | T

これ以外に P(x) が必ず真となるときも、Ex. P(x) は真になる。

P(x) | ¬P(x) | ∀x. (¬P(x)) | ¬(∀x. (¬(P(x))) | ∃x. P(x)
T | F | F | T | T

また、P(x) が必ず偽となる場合は、Ex. P(x) は偽になる。

P(x) | ¬P(x) | ∀x. (¬P(x)) | ¬(∀x. (¬(P(x))) | ∃x. P(x)
F | T | T | F | F

P(x) の真理値のとりえる可能性はこの3つの場合だけだ。しかし、どの場合にも ¬(∀x. (¬(P(x))) と ∃x. P(x) の真理表における真理値は一致する。したがって、この二つの複合命題は同値である。

ここに述べた議論は領域 D が有限集合の場合だったが、これらの推論は述語に排中律が成立していれば領域 D が無限集合であっても適用できる。一階述語論理は領域 D が無限集合の場合も適用できる。すなわち、無限集合の領域 D にも一階述語論理を適用するためには排中律が必須であることがわかる。

追記

真理表の議論では A(x) が真であることは x ∈ A* に、偽であることは x /∈ A* に置き換えることができる。また A(x) ∧ B(x) のような複合命題は A* ∩ B* のように論理結合子に対応する集合演算に置き換えできる。

真理集合 A* と真理集合 B* の集合演算 A* ∧ B* の値もまた領域 D の部分集合である。すなわち、全ての論理演算は対応する領域 D の真理集合族についての集合演算について閉じている。

量化子を使った ∀x. P(x) のような命題は述語を持たないが、仮想的な述語 Q(x) を持つと考えると x ∈ Q* で真偽を論じることができる。この場合 Q* は領域 D と等しいか、または空集合 {} である。

このように一階述語論理の議論は領域 D とその真理集合族の議論に置き換えることができる。命題の真理値の議論については、対象についての述語の意味によらず真理集合族の要素に置き換える事ができるので、論理の法則の抽象性が保たれることになる。

また、述語を真理集合に置き換える利点は、それによって、領域 D が無限集合であっても論理と集合の置き換えが行えるということだ。ただし、命題は排中律を満たし真理集合を定義できなくてはならない。命題が排中律を満たしていれば、任意の対象 x について x ∈ A* かどうかの議論ができるので、命題 A(x) に対応する真理集合 A* を求める事ができる。

このことは、量化子のある命題 ∀x. P(x) が無限集合の領域 D にあっても定義できることを意味している。対象と命題の対で全ての原子命題を作ろうとしても、領域 D が無限集合の場合は、∀x. P(x) = P(a1) ∧ P(a2) ∧ ... と原子命題の無限の論理積を考えないといけないが、命題を集合に変えてやれば、任意の x について x ∈ P* という議論をすることができるので全称命題 ∀x. P(x) を無限の x についても定義することができる。

これらの議論から領域 D に一階述語論理の法則を適用できるための条件が明らかになる。それは、一階述語論理を適用しようと思う領域 D という全体集合が定義されていることと、命題の排中律が満されていることだ。素朴集合論を対象間の帰属関係が定義されたネットワークの全体として定義した場合、排中律が満たされないので、これを領域 D とする一階述語論理を適用することはできない。一方、上の議論では集合の集合というような集合の階層構造はないので、ラッセルのパラドックスのような自己言及のパラドックスも発生しない。

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# by tnomura9 | 2017-09-01 19:20 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

isSubsetOf

前回の記事では領域 D のべき集合について、包含関係にある要素のペアを抜き出すプログラムを紹介した。領域 D の二つの部分集合が包含関係にあるかどうかを判別するために Set.isSubsetOf 関数を使ったが、これは Data.Set の集合型にしか使えないため、リストで表現した集合を集合型に変換していた。

この isSubsetOf 関数がリスト型のデータに使えれば便利だと思っていたら、簡単にかけてしまった。isSubsetOf 関数が定義できれば、リストのままでプログラムが実行できる。実行例は次のようになる。プログラムの意味は前回の記事と同じなので省略する。

Prelude> let isSubsetOf a b = and $ map (\x -> elem x b) a
Prelude> isSubsetOf [2,3] [1,2,3]
True
Prelude> :{
Prelude| let
Prelude| power [] = [[]]
Prelude| power (x:xs) = (power xs) ++ (map (x:) (power xs))
Prelude| :}
Prelude> power [1,2,3]
[[],[3],[2],[2,3],[1],[1,3],[1,2],[1,2,3]]
Prelude> let domain = [1,2,3]
Prelude> let subs = power domain
Prelude> let cartesian = [(x, y) | x <- subs, y <- subs]
Prelude> filter (\x -> isSubsetOf (fst x) (snd x)) cartesian
[([],[]),([],[3]),([],[2]),([],[2,3]),([],[1]),([],[1,3]),([],[1,2]),([],[1,2,3]),([3],[3]),([3],[2,3]),([3],[1,3]),([3],[1,2,3]),([2],[2]),([2],[2,3]),([2],[1,2]),([2],[1,2,3]),([2,3],[2,3]),([2,3],[1,2,3]),([1],[1]),([1],[1,3]),([1],[1,2]),([1],[1,2,3]),([1,3],[1,3]),([1,3],[1,2,3]),([1,2],[1,2]),([1,2],[1,2,3]),([1,2,3],[1,2,3])]

この手の問題の解決には Haskell は非常に強力だ。

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# by tnomura9 | 2017-08-31 18:05 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

方程式としての全称命題

この記事では全称命題は命題というよりは一種の方程式ではないのかという議論をする。

最初に一階述語論理のモデルとしての領域 D を定義する。領域 D = {1, 2, 3} のとき述語 A(x) について A(a) が真となるような対象の集合は述語 A(x) の真理集合 A* だ。これは明らかに D の部分集合である。また、a ∈ D について、a ∈ A* は A(a) の真理値と一致する。したがって a ∈ A* は命題と同一視できる。すなわち領域 D = {1, 2, 3} と D の冪集合 {{}, {1}, {2}, {3}, {1, 2}, {1, 3}, {2, 3}, {1, 2, 3}} は一階述語論理のモデルである。

この領域 D モデルでは、対象 a と真理集合 A* の対は a ∈ A* という命題をつくる。また量化子を用いた全称命題 ∀x. P(x) も真偽値を持ち命題として扱われる。

しかし、ソクラテスが人間なら、ソクラテスは死ぬという推論は、全称命題∀x. (P(x) -> Q(x)) の命題としての性質よりも、量化子がつけられる 命題 P(x) -> Q(x) の性質を利用している。すなわち、∀x. (P(x) -> Q(x)) が真であれば、P(x) と Q(x) の真理集合 P* と Q* の間に P* ⊂ Q* という関係がある。

しかし、この関係式ですら P* と Q* を特定しているわけではない。この関係を充足するすべての領域 D の真理集合を表している。したがって、全称命題 ∀x. (P(x) -> Q(x)) は特定の命題と言うよりは、この関係式を充足する真理集合の集合をしめしている。この意味で全称命題は方程式と言える。

そこで領域 D において Ax. (P(x) -> Q(x)) が真となるような述語 P(x) と Q(x) の対、あるいは真理集合 P* と Q* の対にはどのような物があるかを Haskell で計算してみた。

領域 D は domain = [1,2,3] とリストにした。定義した power 関数で domain の冪集合 subs を計算する。:{ ... :} は複数行で定義する時のコマンドだ。subs_set はリスト形式の部分集合を集合に変換する。cartesian は subs_set の直積集合。最後の結果は Set.isSubsetOf 関数で包含関係のある部分集合のペアを選びだしたもの。

Prelude> import qualified Data.Set as Set
Prelude Set> let domain = [1,2,3]
Prelude Set> :{
Prelude Set| let
Prelude Set| power [] = [[]]
Prelude Set| power (x:xs) = (power xs) ++ (map (x:) (power xs))
Prelude Set| :}
Prelude Set> let subs = power domain
Prelude Set> subs
[[],[3],[2],[2,3],[1],[1,3],[1,2],[1,2,3]]
Prelude Set> let subs_set = map Set.fromList subs
Prelude Set> subs_set
Prelude Set> let cartesian = sequence [subs_set, subs_set]
Prelude Set> filter (\x -> Set.isSubsetOf (x!!0) (x!!1)) cartesian
[[fromList [],fromList []],[fromList [],fromList [3]],[fromList [],fromList [2]],[fromList [],fromList [2,3]],[fromList [],fromList [1]],[fromList [],fromList [1,3]],[fromList [],fromList [1,2]],[fromList [],fromList [1,2,3]],[fromList [3],fromList [3]],[fromList [3],fromList [2,3]],[fromList [3],fromList [1,3]],[fromList [3],fromList [1,2,3]],[fromList [2],fromList [2]],[fromList [2],fromList [2,3]],[fromList [2],fromList [1,2]],[fromList [2],fromList [1,2,3]],[fromList [2,3],fromList [2,3]],[fromList [2,3],fromList [1,2,3]],[fromList [1],fromList [1]],[fromList [1],fromList [1,3]],[fromList [1],fromList [1,2]],[fromList [1],fromList [1,2,3]],[fromList [1,3],fromList [1,3]],[fromList [1,3],fromList [1,2,3]],[fromList [1,2],fromList [1,2]],[fromList [1,2],fromList [1,2,3]],[fromList [1,2,3],fromList [1,2,3]]]

全称命題 ∀x. (P(x) -> Q(x)) が真であることは、上に示したような述語の真理集合 P* と Q* の組があることを示している。

追記

最後の結果が読みづらかったので、集合をリストに変換して表示してみた。

Prelude Set> let inclusion = filter (\x -> Set.isSubsetOf (x!!0) (x!!1)) cartesian
Prelude Set> map (\x -> map Set.toList x) inclusion
[[[],[]],[[],[3]],[[],[2]],[[],[2,3]],[[],[1]],[[],[1,3]],[[],[1,2]],[[],[1,2,3]],[[3],[3]],[[3],[2,3]],[[3],[1,3]],[[3],[1,2,3]],[[2],[2]],[[2],[2,3]],[[2],[1,2]],[[2],[1,2,3]],[[2,3],[2,3]],[[2,3],[1,2,3]],[[1],[1]],[[1],[1,3]],[[1],[1,2]],[[1],[1,2,3]],[[1,3],[1,3]],[[1,3],[1,2,3]],[[1,2],[1,2]],[[1,2],[1,2,3]],[[1,2,3],[1,2,3]]]

繰り返しの操作をループを使わずに記述できるのは嬉しい。Haskell で何か作りたくなってきた。

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# by tnomura9 | 2017-08-30 08:27 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

含意の全称命題の意味

「全ての対象についてそれが人間であるならば、それは死すべきものである。」という全称命題が真であるということはどういうことを意味しているのだろうか。

これを記号化すると ∀x. (P(x) -> Q(x)) となる。そこで、領域 D の対象 a を取り上げて P(a) -> Q(a) という命題を作ってみる。これは含意の複合命題だから、その真理表を作ることができ、それは次のようになる。

P(a) | Q(a) | P(a) -> Q(a)
T | T | T
T | F | F
F | F | T
F | F | T

この真理表には P(a) -> Q(a) が偽の場合もある。つまり、P(a) が真で Q(a) が偽の場合は P(a) -> Q(a) は偽になる。このことは、含意の真理表は常に真になるとは限らないことを示している。

しかし、∀x. (P(x) -> Q(x)) は全ての x に対して P(x) -> Q(x) が真になることを主張している。これは真理表の結果とは異なるが、P(x) と Q(x) の間に特別な関連性があれば矛盾しない。すなわち ∀x. (P(x) -> Q(x)) の P(x) と Q(x) の間には特別な関係があり、P(a) が真であって、Q(a) が偽であるということはないと考えれば良い。

そのような特別な P(x) と Q(x) の関係では、P(a) -> Q(a) は常に真になる。この場合 P(a) -> Q(a) の真理表は次のように常に真になる。

P(a) | Q(a) | P(a) -> Q(a)
T | T | T
F | T | T
F | F | T

このとき P(a) が真であれば、Q(a) のとり得る値は真でしかない。命題 P(x) の真理集合を P* とすると P(a) が真であるということは、a ∈ P* である。このとき、Q(a) は必ず真であるので a ∈ Q* である。全称命題 ∀x. (P(x) -> Q(x)) はこの関係が領域 D のどのような対象についても成立することを示している。すなわち、任意の a について a ∈ P* ならば必ず a ∈ Q* である。

このことは領域 D の全ての対象 x について P(x) が真であるということを示しているわけではない。対象 a について P(a) は真の場合も偽の場合もある。しかし、P(a) が真の場合は必ず Q(a) も真なのだ。

ところで、a ∈ P* ならば a ∈ Q* ということは、真理集合 P* と Q* の間に包含関係 P* ⊂ Q* があることを示している。また、P* ⊂ Q* から ∀x. (P(x) -> Q(x)) も証明できる。したがって、全称命題 ∀x. (P(x) -> Q(x)) が真であるということと、P* ⊂ Q* とは同値である。

このように、一階述語論理のモデルである領域 D という対象の集合を考えれば、述語論理の推論が推論規則だけでなく、領域 D の対象と、述語の真理集合の関係としてとらえる事ができるので、述語論理の性質をより具体的に捉えることができる。

たとえば領域 D = {1,2,3,4,5} において、命題 P の真理集合が P* = {2,3} で命題 Q の真理集合が Q* = {2,3,4} であったとする。この場合明らかに P* ⊂ Q* であるが、この時の P(x) -> Q(x) の真理値を領域 D について全て調べてみると、

x = 1 のとき、P(1) = F, Q(1) = F, P(1) -> Q(1) = T
x = 2 のとき、P(2) = T, Q(2) = T, P(2) -> Q(2) = T
x = 3 のとき、P(3) = T, Q(3) = T, P(3) -> Q(3) = T
x = 4 のとき、P(4) = F, Q(4) = T, P(4) -> Q(4) = T
x = 5 のとき、P(5) = F, Q(5) = F, P(5) -> Q(5) = T

となって ∀x. (P(x) -> Q(x)) が真であるということが分かる。

一般に、一階述語論理の公理系があって、それを充足するモデルを見つけるという順番で考察が行われるが、逆に一階述語論理のはこのような領域 D の性質であって、公理系はそれを無限集合やそのたの数学的構造に適用できるように拡張したものだと考えたほうが、思考の順序としては分かりやすいのではないかと思う。

つまり、一階述語論理は有限集合の領域 D の法則であるが、その他の領域 D については一階述語論理が適用できるかどうかを改めて考えるのだ。この観点からは、ラッセルのパラドックスに別の解釈を与える事ができる。

すなわち、属性関係の与えられた集合という対象の集合である領域 D を考えたとき、この D の構造には一階述語論理が適用できないという考え方だ。ラッセルのパラドックスを集合論の危機ととらえず、このような構造を持った領域 D には一階述語論理が適用できない場合があると考えるのだ。いいかえると、ものの集まりという集合と、属性関係の与えられた対象の外延としての集合とは意味が異なっているということだ。

素朴集合論の集合とはものの集まりであるという定義には矛盾はないような気がする。しかし、集合の集合というようなものを表現するために、属性関係の与えられた集合という対象の全体として集合の世界を捉えたとき、このような領域 D では構造的に一階述語論理が適用できない場合が出てくるのだ。

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# by tnomura9 | 2017-08-29 02:50 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

全称命題の真理値

一階述語論理を適用する対象の領域を D = {1,2,3,4,5} とし、命題 A, B, C の真理集合を A* = {2,3}, B* = {3,4}, C* = {2,3,4} とする。すると、命題 A, B, C の命題関数は A(x) = x ∈ A*, B(x) = x ∈ B*, C(x) = x ∈ C* で定義できる。このとき命題 E = A -> B の命題関数は (A -> B) = ¬A ∨ B なので、E(x) = (x /∈ A*) or (x ∈ B*) と定義される。これらは皆 Hsskell の関数で次のように記述できる。

Prelude> import qualified Data.Set as Set
Prelude Set> let d = Set.fromList [1,2,3,4,5]
Prelude Set> let a = Set.fromList [2,3]
Prelude Set> let b = Set.fromList [3,4]
Prelude Set> let c = Set.fromList [2,3,4]
Prelude Set> let imply x = (Set.notMember x a) || (Set.member x b)

そこで、imply(x) = A(x) -> B(x) の真理集合を求めてみる。これは領域 D の要素を一つづつ imply(x) に代入して真理値が真のものだけを抜き出せばいいから、Set.filter 関数を使うことで実現できる。

Prelude Set> Set.filter imply d
fromList [1,3,4,5]

この真理集合には要素 2 が抜けているので全称命題 ∀x.(A(x)->B(x)) の真理値は偽となるはずだ。これは Prelude の and 関数で計算できるはずだが、and :: [Bool] -> Bool なので and 関数には Bool 値のリストを与えなければならない。従ってあらかじめ集合 d を Set.toList のようにリストに変換しておく必要がある。

Prelude Set> and (map imply (Set.toList d))
False

一方、領域 D の要素の少なくとも1つは imply(x) を真にするから存在命題 ∃x.(A(x) -> B(x)) の真理値は真である。存在命題の真理値の計算は Prelude の or 関数を使う。

Prelude Set> or (map imply (Set.toList d))
True

このように、量化子を使った全称命題や存在命題の真理値の計算は、領域 D の全ての要素についてそれを命題関数 imp(x) に代入した時の真理値をもとめ、それを集計することで得られる事がわかる。

全ての x について x が人間ならば x は死すべきものであるという全称命題 ∀x. (P(x) -> Q(x)) が真ならば、ソクラテスは死すべきものであるという推論では、この全称命題が真であることが仮定されているが、上の imply(x) の全称命題は残念ながら偽だ。含意 A(x) -> B(x) はどのようなときにその全称命題が真になるのだろうか。

そこで、今度は含意を含む命題 imply2 を A(x) -> C(x) で定義してみる。

Prelude Set> let imply2 x = (Set.notMember x a) || (Set.member x c)

すると imply2 の真理集合は領域 D に一致し、その全称命題は真になる。

Prelude Set> Set.filter imply2 d
fromList [1,2,3,4,5]
Prelude Set> and (map imply2 (Set.toList d))
True

どうして A(x) -> B(x) の全称命題は偽で A(x) -> C(x) の全称命題は真なのだろうか。それは A(x) の真理集合と C(x) の真理集合の間に包含関係があるからだ。

Prelude Set> Set.isSubsetOf a c
True

実際 A(x) の真理集合の要素の全ては、C(x) の真理集合の要素でもある。

Prelude Set> a
fromList [2,3]
Prelude Set> c
fromList [2,3,4]

すべての x についてそれが人間ならばそれは死すべきものであるという全称命題は、暗に x が人間の要素であれば、同時に x は死すべきものの要素でもあるということを意味していたのだ。したがって、ソクラテスは人間であるという命題が真であれば、ソクラテスは死すべきものであるという命題も真になる。

これらの推論は別にプログラムを作らなくても理解できるが、プログラムを使ってアルゴリズム化することによって、その意味するものが明確になるという利点がある。


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# by tnomura9 | 2017-08-27 17:28 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

含意の真理集合

対象全体の集合を領域 D = [1,2,3,4,5] とする。また、述語 A(x) の真理集合を A* =[2,3]、述語 B(x) の真理集合を B* = [3,4] とする。この時命題 A(2) の真理値は真で、A(1) の真理値は偽である。これはまた 2 ∈ A* と 1 ∈ A* の真理値と一致する。従って命題 A(2) の真理値を 2 ∈ A* で表すことができる。このモデルで含意の述語 A(x) -> B(x) の真理集合を計算してみる。

ところで、命題論理の定理で A -> B = ¬A ∨ B であることがわかっている。また、命題 A(x) の真理値は x ∈ A* の値と一致するから A(x) -> B(x) の真理値は (x /∈ A*) ∨ (x ∈ B*) と一致することが分かる。

これらの条件を元に A(x) -> B(x) の真理集合を Haskell で計算すると次のようになる。

Prelude> import qualified Data.Set as Set
Prelude Set> let d = Set.fromList [1,2,3,4,5]
Prelude Set> let a = Set.fromList [2,3]
Prelude Set> let b = Set.fromList [3,4]
Prelude Set> let imply x = (Set.notMember x a) || (Set.member x b)
Prelude Set> Set.filter imply d
fromList [1,3,4,5]

計算された真理集合には要素 2 が含まれていないが、2 は a には含まれるが、b には含まれていない。つまり、A(a) は真であるが B(2) は偽である。したがって A(2) -> B(2) は偽である。従って 2 が A(x) -> B(x) の真理集合には含まれない。

A(x) -> B(x) の真理集合は集合演算で次のように直接計算することもできる。

Prelude Set> Set.union (Set.difference d a) b
fromList [1,3,4,5]

この場合は命題 A の否定の真理集合が、A の真理集合の補集合であるところが注意点だ。

上に上げた例では、A(x) -> B(x) の真理集合が領域 D と一致しないので、∀x.(A(x) -> B(x)) は偽である。A(2) -> B(2) が偽になるからだ。

このように領域 D を考えると、述語は D の部分集合、命題の真理値は x ∈ A の 値で定式化でき、命題結合子を使った複合命題の真理集合が自動的に計算できることが分かる。すなわち、一階述語論理の本質が真理集合の集合演算であることが分かる。

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# by tnomura9 | 2017-08-27 00:42 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

Haskellと一階述語論理の集合モデル

一階述語論理の集合モデルを作って、Haskell で操作してみた。一階述語論理の有限集合モデルを次のように構成する。

まず、有限の対象の集合である領域(domain) D を考える。次に領域 D の冪集合 2^D を考えると、その要素は、一階述語論理の1変数命題関数(述語)の真理集合になる。述語 A があると、対象 a と述語 A との対 A(a) は真偽値をもつ命題をあらわし、A(a) が真になるような対象の集合は述語 A(x) の真理集合になるからだ。これを A* とすると、A* は必ず領域 D の部分集合である。

対象 a と真理集合 A* があるとき、 a ∈ A* は真偽値をもつ。すなわち A(a) と a ∈ A* は同値である。したがって、a ∈ A* を命題と考えることができる。また、真理集合 A* を述語 A(x) と同一視することができる。このとき、論理結合子による複合命題 (a ∈ A*) ∧ a ∈ B* の真理集合は A* ∩ B* と一致する。また、論理結合子の演算は 2^D について閉じている。

量化記号を使った命題 ∀x.A(x) の真偽は A(x) の真理集合が領域 D と一致するときに真となり、一致しない時に偽となる。∃x.A(x) の真偽は A(x) の真理集合が空集合 {} のとき偽となり、そうでないとき真となる。∀x. A(x) が真であることだけがわかっているとき、A(x) の真理集合は領域 D である。一方、∀x.A(x) が偽であることがわかっているときは、A(x) の真理集合は領域 D ではないことはわかるが、それ以外のどれであるかは特定できない。

2変数以上の命題関数については、領域 D の自身との直積集合で考える。命題 A(x,y) の真理集合は D x D の部分集合である。

こういうふうに抽象的に定義するとイメージがつかみにくいので Haskell で実際に集合を作ってみると言うのが目論見だ。

Haskell で集合を扱うためには Data.Set モジュールをインポートする。Data.Set モジュールの関数の名前は Prelude のものと衝突するものがあるので、qualified インポートしてモジュール名を Set にしておく。こうすれば Data.Set の関数名を Set.map のように Prelude の map と衝突させないで使うことができる。

Prelude> import qualified Data.Set as Set

Data.Set で集合を作るにはリストを fromList 関数で集合に変換する。

Prelude Set> let d = Set.fromList [1..5]
Prelude Set> d
fromList [1,2,3,4,5]
Prelude Set> let a = Set.fromList [2,3]
Prelude Set> a
fromList [2,3]
Prelude Set> let b = Set.fromList [3,4]
Prelude Set> b
fromList [3,4]

要素が集合に属しているかどうかの判別は member 関数で行う。

Prelude Set> Set.member 2 a
True

和集合を作る関数は union 関数だ。

Prelude Set> Set.union a b
fromList [2,3,4]

共通部分は intersection 関数で求めることができる。

Prelude Set> Set.intersection a b
fromList [3]

述語 A(x) の否定 ¬A(x) の真理集合は、領域 D を全体集合とした時の A* の補集合だ。これは領域 D - A* という差集合になる。差集合を求める関数は difference 関数だ。

Prelude Set> Set.difference d a
fromList [1,4,5]

member 関数は要素と集合の帰属関係を判定するが、map 関数を使うと領域 D の全ての対象に対して集合 A* への帰属関係を調べる事ができる。ただし、この場合少し工夫が必要だ。集合に対して map が使えないので、集合を toList 関数で一旦リストにする必要があるのだ。

Prelude Set> map (\x -> Set.member x a) (Set.toList d)
[False,True,True,False,False]

このように Data.Set モジュールを利用すると集合演算が簡単に行える。次回からはこの機能を利用して、一階述語論理のモデルの性質を抽象的にではなく具体的に調べることにする。


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# by tnomura9 | 2017-08-26 07:56 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

∀xP(x) の真理集合

まず、簡単に述語論理のモデルの構成をさらってみる。

領域 D という対象の集合があり、その対象の性質を言明する A(x) という述語がある。また、対象 a と述語 A(x) の組は A(a) という命題であり、これは排中律によって必ず真か偽の値をとる。

このため、ある述語 A(x) について、領域 D の対象全てとの対をテストすることで、A(x) が真となるような領域 D の部分集合 A* を定めることができる。この A* は命題 A(x) の真理集合である。また、真理集合は必ず領域 D の部分集合であるから、真理集合は領域 D の冪集合の要素である。

原子述語 A(x) を論理結合子で結合して、A(x) ∧ B(x) のような複合述語を作ると、その真理集合は A* ∩ B* のように真理集合の集合演算の値となる。さらに、A* ∩ B* もまた、領域 D の冪集合の要素である。すなわち、領域 D は論理結合子と対応する集合演算について閉じている。したがって、領域 D に対する論理的な操作はすべて真理集合の集合演算に変換することができる。

こういうふうに考えると、論理の本質は、排中律の成立する領域 D の集合についての集合演算として捉えることができる。

しかし、述語論理には量化子という厄介なものがある。∀xP(x) というのは真か偽の値を持つ命題だが、これは対象と述語のペアではない。しかし、このような例外的な命題があると、上のようなスッキリした図式をつくることができなくなるので不便だ。そこで、形式的に ∀xP(x) の述語 Q(x) を考えてみることにした。そうすると、∀xP(x) = Q(a) のように命題を領域 D の対象と述語 Q(x) とのペアで考えることができ、Q(x) の真理集合を考えることができる。

しかし実際には ∀xP(x) の真偽値が対象との組み合わせで変ることはないので Q(x) はどのような対象との組み合わせでも常に真かまたは偽である。しかし、このことは同時に、Q(x)の真理集合が領域 D と一致するかまたは空集合であることを示している。また、∃xP(x) のような存在量化子を使った命題も、事情は同様である。

このように、存在量化子を使った命題についても形式的に述語 Q(x) を考えることで、全ての命題は対象と述語のペアで真理値が定まると考えることができる。このことで述語論理における命題とは何かということが定式化できるので、A -> (B -> A) のような命題論理の定理から、

∀x(A(x) -> (B(x) -> A(x))
∀x∀y(A(x) -> (B(y) -> A(x))
∀x(∀yA(y)(x) -> (B(x) -> ∀yA(y)(x))

などの定理を演繹できる。述語論理は述語の排中律を満たす領域 D の集合演算なのだと考えると、論理の応用範囲の広さの意味と、論理が適用できない対象 D はどんなものかというイメージが明確にできる。

何度も言うが、ラッセルのパラドックスは集合の世界 D を「所属関係を定義された対象の集合」という対象のネットワークで捉えようとしたために、領域 D が排中律を満たすことができないことを示しているだけだ。

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# by tnomura9 | 2017-08-15 04:28 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)

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# by tnomura9 | 2017-08-13 21:47 | 話のネタ | Comments(0)