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探索

2型糖尿病の新しい治療薬としてDPP-4阻害薬が登場した。膵臓のインスリン分泌を直接に刺激する従来の薬と違い、経口的に摂取された糖質に対して分泌される消化管ホルモンの作用を増強する薬だ。そのため、強力な血糖降下作用がありながら、空腹時の低血糖の発作がない。

以前から、経静脈的にブドウ糖を投与された時より、経口的に投与された時の方がインスリン分泌量が多いことが分かっていた。それは、小腸からインクレチンという消化管ホルモンが分泌され、それが、膵臓からのインスリン分泌を促進し、グルカゴンを抑制し、肝臓からの糖の放出を抑制するからだ。

しかし、インクレチンは血中や細胞表面のDPP-4という酵素によってすぐに分解されるため血中の半減期は2分程度と短く、直接血中に投与してもすぐに効果が無くなっていた。ところが、DPP-4阻害剤は、このDPP-4の酵素作用を阻害するため、内因性に分泌されたインクレチンの半減期が伸びて、食事をした時のインスリン分泌が増強し、糖尿病の人でも血糖が上がりにくくなる。また、食事をしていないときはインクレチンは分泌されないので、空腹時の低血糖を起こす危険性も低くなる。

ところが、このDPP-4はT型リンパ球の表面にあるCD26という分子と同じものだ。このCD26はTh1リンパ球という細胞性免疫を賦活するリンパ球の表面にある。Th1は、インターフェロンを分泌し、キラーT細胞やマクロファージの活動を促進する。細胞性免疫は主にウイルス感染の時に働くので、DPP-4阻害剤を服用している人は、風邪などのウイルス感染症には注意したほうが良いかもしれない。

また、CD26はADA(アデノシンデアミナーゼ)というアデノシンを分解する酵素の作用の補助をしており、細胞膜表面でADAと会合すると細胞内に取り込まれ、ADAの働きで細胞の増殖を抑制すると言われている。また、CD26は悪性中皮腫の表面などに多く発現しているが、ある種のCD26抗体を投与するとこの悪性腫瘍の増殖が止まってしまう。

糖尿病の話から、免疫や悪性腫瘍の話に飛んでしまったが、人間の体の複雑さがよくわかる。それと同時に、Googleで検索するだけで、糖尿病から悪性腫瘍まで簡単に探索していくことができるのに驚かされる。Googleのインパクトがどんなに大きいかが分かる。考えることに興味のある人は、Google検索に慣れることが必須のような気がする。

余談だが、ここに書いた情報は残念ながら全て日本語で得られるわけではない。少なくとも英語を読むことに関してだけは、英語嫌いの人も一考する必要があるのではないだろうか。
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by tnomura9 | 2010-08-28 07:18 | 考えるということ | Comments(0)

経験

『永遠の0』 内田尚樹著を読んでいたら、「戦闘機のパイロットの経験ある下士官は有能だったのに、経験不足の士官学校出身者にしか指揮をとらせなかったから判断ミスで戦闘に負けてしまったのだ。」というようなことが書かれていた。

実際にそう感じることは多いが、それでは、実戦経験の豊富な人に指揮を任せたら必ず勝てるのだろうか。溶鉱炉の管理に分光器を持ち込んだ技術者が、熟練工に笑われながらも最終的には人間が勘でやるより安定した結果を出せるようになったという話を聞いたことがある。

士官学校に合格するような人物は、有能なはずで理解力や知識の幅広さにおいても現場の叩き上げの兵士よりは上だろう。それでも、現場でヘマをしてしまうのはなぜだろうか。

おそらく、それは、経験というものが言語化できないために、人から人への伝達が難しいからではないだろうか。学校で伝達されるのは、言語化されやすい知識のみだ。現場の経験のような、言語化することすら難しい知識は伝達がほぼ不可能だ。しかし、戦闘行為のように経験の比重が非常に大きい物は、経験という言語化不可能な知識の共有が絶対的に必要になってくる。

しかしながら、昔ながらの徒弟制度では現代の進化のスピードについていけないだろう。経験という目に見えない知識を伝達する現代的な方法が必要とされているのではないだろうか。

その候補に上げられるのが、シミュレーションではないか。スペースシャトルの宇宙飛行士が、宇宙での作業はシミュレーションと全く変わらなかったので戸惑いはなかったと言っていたのが記憶に残っている。よく練り上げられたシミュレーションのシステムは非言語性の経験を伝達する有効な方法ではないかと思う。

医療の質を上げようと思うなら、言語性の知識を伝達するだけでなく、実際の現場に適用できるシミュレーションのシステムと、それをどのくらいの分量で適用したら経験がきちんと伝達できるのかという研究は欠かせないと思う。
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by tnomura9 | 2010-08-21 08:01 | 考えるということ | Comments(0)

データマイニング

VEGF(血管内皮細胞増殖因子)は血管の新生を誘導する糖蛋白だ。血管内皮細胞表面のVEGF受容体と結合すると、細胞の増殖、脈管形成を誘導し、新しい血管の枝を発生させる。癌細胞がVEGFを分泌し、新生血管を腫瘍内に引き込むことによって血流を確保し、腫瘍の増殖を助けていることはよく知られている。

したがって、VEGFの抗体を投与することで癌の増殖を抑制する研究がされており、臨床にも使われるようになってきた。

しかし、VEGFはその発見の最初から血管透過性を亢進させることが知られている。癌がVEGFを分泌するのなら、肺がんの胸水もVEGFを阻害することで治療できるのではないかと思いついた。

そこで、Google で「VEGF 胸水 肺癌」のキーワードで検索したら、実際にそういう研究が発表されていた。VEGFレセプターのリン酸化を阻害する薬を、人の肺癌細胞を注射したヌードマウスに投与したら、癌の進展は抑制できなかったものの、胸水の発生を抑制できていた。

また、VEGFはアンギオテンシンIIで分泌が増加するが、ACE阻害剤やARBでそれを抑制する事ができる。それなら癌性の胸水や腹水のあるひとにこれらの薬剤を投与したら、腹水や胸水を減らすことができるのではないだろうか。

なんで、これが表題のデータマイニングと関係あるのだろうと思うかもしれない。しかし、Google 検索することで必要な情報を手軽に探し出すことができるのに驚いたのだ。雑誌も何も購入していないのに、パソコンのキーを叩いただけで、かなり詳しい情報を取り出すことができる。

何かのアイディアを思いついても大変なのはそのアイディアを実現するための知識や、情報を見つけることだ。アイディアを実現するための強力な道具がすぐそばにあったのだ。アイディアがあっても実現する環境にないので実行に写せないという言い訳ができない状況がでてきたようだ。

しかし、だからといって、管理人が何か新しいことをできる可能性はない。気力と体力に欠けているからだ。道具がその性能を発揮するためには道具を使う人の問題も重要だ。
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by tnomura9 | 2010-08-20 08:28 | 考えるということ | Comments(0)

要約のコツ

文章の要約を作るときは、マインドマップを書いてみるのが便利だ。マインドマップの中央にその段落の中心文をおき、段落のその他の内容をその中心文に結びつけていく。

マインドマップでは、普通、中心に置くのはキーワードだが、文章を理解するときはキーワードではなく、主語と述語のみから構成された簡潔な文のほうが良い。キーワードはその文章で取り扱っている対象を示すが、キーワードが主語と述語にある文は、その対象についての判断が含まれるからだ。

次の文章は、Wikipediaのプロトタイピングについての記事の冒頭の部分だ。

プロトタイピング(Prototyping)とは、実働するモデル(プロトタイプ)を早期に製作する手法およびその過程を意味する。その目的は、設計を様々な観点から検証するためだったり、機能やアイデアを形にすることでユーザーから早めにフィードバックを得るためだったり様々である。プロトタイピングはシステム設計工程の一部として組み込まれることも多く、それによってプロジェクトのリスクと費用を低減させると考えられている。反復型開発では1つ以上のプロトタイプが作られ、欠陥や問題が徐々に解決されていく。プロトタイプの改善が十分なされ、機能/堅牢性/製造の容易さといった設計目標に達したとき、製品としての製造が可能となる。


この文章の場合、マインドマップの中心に置くのは、「プロトタイピングとは実働するモデルを早期に制作する方法である。」という文だ。主語は「プロトタイピングは」で、述語は「実働するモデルを早期に制作する方法だ」だ。

この中心文だけ読んでもプロトタイピングが何だということは大体分かるが、この段落の他の文章をこの中心文に関連付けてマインドマップを作ってみると、プロトタイピングの意義がよくわかってくる。また、この関連付けの際に「なぜ?」とか「どのように?」などの質問を発しておくと理解がしやすくなる。

例えば、中心文に対し、「なぜそういうことをするのか、その目的は」などと自問自答すると、

「ソフトウェアの設計の検証ができる。」、「ユーザーのフィードバックが得やすくなる。」、「プロジェクトのリスクと費用を軽減する。」などの文を見つけることができる。

また、「プロトタイピングにはどんな種類があるのか?」という質問には、

「反復型開発ではひとつ以上のプロトタイプが作られる。」などの文章が見つかる。

これらの詳細の文をマインドマップにして中心文の周辺に配置すると段落の構造がよくわかる。また、簡単な構造なら、マインドマップをわざわざ描かずに頭の中で理解するだけでもいい。

文章の要約のコツは、「中心文を発見しそれを主語と述語からなる判断を表す文にしておくこと。」、「その中心文を元にマインドマップを作るが、中心文と枝のつなぎに、疑問や質問を糊として使うこと。」のふたつだ。このコツに気をつけておけば、ほぼ機械的に要約をつくることができるようになる。
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by tnomura9 | 2010-08-19 05:22 | 考えるということ | Comments(0)

要約の効用

『Unblock Me』をやってみて、ブロックパズルのような非言語的知識に対して言語化することが、解法の発見と意味の理解に効果的だということを実感した。

ところが、今日参考書を呼んでいて、内容を要約として言語化することが同じような効用を持つのではないかと思いついた。確かに、段落ごとに、あるいは章節ごとに自分の言葉で要約してみると内容がよくわかる。言語化には自分の考えを他者に伝えるために表現するという役割以上の働きがあるのではないだろうか。

文章の内容を要約するためには、書かれている内容のどこが骨格となる本質的なもので、どこがその骨格を肉付けしている部分なのかを見抜かなければならない。また、どの記事は共通した性質をもっていて、どの記事は相反する性質を持っているのかとか、記事の間の因果関係はどうなっているのか、どちらが先行してどちらがその結果となっているのだろうかなど、色々と頭を使わなければならなくなる。そのため、要約を作らない時より作った後の方が内容の理解が格段に深くなるのだろう。

雑多な事象の中から性質の共通するものを見出してそれに命名するという抽象化の作業は、言語の本質的な機能だ。非常に重要で効用のある機能だ。このように強力な道具はもっと意識的に活用すべきだろう。
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by tnomura9 | 2010-08-18 02:11 | 考えるということ | Comments(0)

言語化の効用その2

iPod のパズル『Unblock Me』をまだやっているが、だんだんパズルを解くコツを言語化できるようになってきた。

「縦方向のブロックは縦方向のブロックどうし、横方向のプロックは横方向のブロックどうし集めるようにすると答えが見つかりやすい。」、「赤いブロックの進行方向を妨げる縦方向のブロックが2重にあり、同時には移動できないときは、エアロックのように一旦赤いブロックをその二つの縦方向のブロックの間に移動させ、最初のブロックを元の位置に戻してから、次のブロックを開けるとよい。」などだ。他にも文章化は難しいが、単なる動作のイメージとしてではなく、抽象化し概念化された操作のコツもみつけた。

完全に言語化できない状態で、問題を説いていたときはなぜ答えが出たのかという反省ができなかったが、言語化するようになってからは、なぜ答えが出なかったのかや答えが出なかったときにどこに問題があったのかなどの検討ができるようになってきた。必然的に答えに到達するまでの時間もかなり向上している。

言語化しなくても、パズルを解くことはできるが、言語化すれば、なぜ解けたのかというメタ解法てきな検討を行うことができるようになる。「見える化」によって、問題の構造を視覚化することができるが、言語化によって、問題の本質を抽象化することができるようになる。数学の問題でも、単に解ける場合と、どういうテクニックをどういう目的で使ったかという解法の意味を分かって解ける場合の二通りがあるが、後者の場合は問題の解き方の言語化ができているからだ。

問題は解けるが、その意味がさっぱりわからないという場合は、言語化がまだ不十分なのだろう。

話は変わるが、非言語的な推論の種類には2種類ある。ひとつはパターン認識だ。一見乱雑なパターンの中にある規則性を発見する推論。もう一つは、将棋の読みのように、現在の盤面に操作を加えたと仮定してその後にどういう事が起きるかということを推測する推論だ。

この後者の推理力を鍛えるのには、将棋や囲碁が有用だが、もっと構造の単純な、フリーセルやUnblock Meのようなパズルも便利だ。学習に要する時間が短く、操作によって状態を変えていくときの推論の性質を端的に示してくれる。

いずれにせよ、言語化できない推論の性質を知っておくことや、それと言語化された知識との関連性を知ることは大切な事だ。
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by tnomura9 | 2010-08-16 06:20 | 考えるということ | Comments(0)

非言語的知識の伝達

iPod のパズル『Unblock Me』をいじるようになってから、言語化できない知識やスキルが気になってきた。

非言語的知識という観点から、あれこれ考えてみると、本当に多くの実際的知識は言語化されないのに気がついた。実生活に有用な知識の大半が非言語的知識なのに、学校で教えられるのが言語的知識ばかりだったら、教育の費用対効果に問題が出てくるのではないだろうかと思う。

非言語的知識のうち最も重要なのが、社会性やコミュニケーションの能力だ。これらの知識は以前は、祖父母や親戚や親の友人や、学校でのクラブ活動などで身につけていた。まとまって、体系的に教えられることはなかったが、なんとなく行動している日々の生活の中で豊富な知識が伝えられていた。

これらの非言語的知識が伝達されなくなったのは、核家族化が重要な原因の一つではある。また、もう一つは子どもが学校外の活動で極端に忙しくなったのもある。しかしながら、交通機関の発達により、個人の活動範囲が広がったために、社会習慣が流動的になったという面が大きいのではないだろうか。ピレネー山脈のこちら側と向こう側では価値観が全く変わってくる。昔は山を超えて移動することは余りなかったので問題は発生しなかっただろうが、今は、簡単に山を超えて行き来することができる。

以前は体育会系の学生が採用の際に有利だったが、最近はそうでもないというのは、そういう社会の慣習の流動性を表しているのではないかと思う。

非言語的知識は眼に見えないので、伝達が難しい。しかし、教育の効率という観点からは避けて通れない問題だ。
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by tnomura9 | 2010-08-14 09:16 | 考えるということ | Comments(0)

Anego

TVドラマのDVD『Anego』を見た

企業のオフィスを舞台にした恋愛ドラマだが、個々のイベントの多彩さに驚いた。

結婚したい女子社員、結婚したくない男子社員、派遣社員と正社員の齟齬、上司と部下の不倫、不倫相手と妻の確執、同じパターンの女性と不倫を繰り返す男、心理的なストレスを抱えた人に振り回される周囲、等々。それぞれがまた、そうかもしれないなというリアリティを感じさせるように表現されている。個々のエピソードの関連も唐突ではなく、慎重に配置された伏線は、あっというような展開をする。

DVDを見たほうが面白いので、内容の説明はしないが楽しめた。

この脚本は女性だなと思った、女性の心理描写が自分の発想と違っていたからだ。女性の感情は好悪の情が入り交じるだけでなく複雑に関連しあっている。時々女性の気持ちが分からなくなるのはこういう事だったのかと納得させられた。また、アイディアの引き出しの多さと、現実感を感じさせる描写に感心していたが、Wikipedia を調べたら、原作が林真理子の同名の小説だった。

人間は複雑なものだ、面白いが分かりすぎるとしんどいだろう。
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by tnomura9 | 2010-08-13 15:36 | 話のネタ | Comments(0)

千の風になって

知り合いは老人ホームを訪問して歌の奉仕をしている。

ある日、当時流行していた『千の風になって』という歌を歌ったら、入居者のひとからひどく叱られたそうだ。

歌の冒頭が「私のお墓の前で、泣かないでください。」だから無理もないかもしれない。

死後の世界のことについては、一度死んで生き返った人に聞くのが一番いい。心停止してERで蘇生した人の話を聞くと、お花畑があって歩いていくと川が流れていて、向こうに死んだはずの家族が迎えに来ていたというような話もあるが、単に意識がなくなって、目が覚めたら点滴につながれていたというのが多い。

眠って目が覚めなかったというのであれば、死もそう恐れるようなことがらではないのではないだろうか。死の恐怖というのは、死にたくないという本能が作り出す幻影なのかもしれない。
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by tnomura9 | 2010-08-09 08:03 | 話のネタ | Comments(0)

考える人

先日テレビでNHKの「ためしてガッテン」を見たら、便秘の話をしていた。

レントゲンに写るプラスチックのビーズを飲ませて腹部のレントゲンを撮ってみると、ビーズがなかなか出て行かないタイプの便秘と、ビーズはすぐに出てしまうのに残便感が強烈な便秘の2種類があるそうだ。

ビーズがなかなか出て行かない便秘は納得できるが、ビーズが出てしまうのに便秘だとは不思議な話だと思って見ていたら、直腸の壁が一部飛び出していて、そこに便が溜まるので残便感がとれないのだそうだ。この残便感が結構強烈なので、トイレでいきむのを繰り返している内に、この部屋がどんどん膨れていって、便秘感がどんどんひどくなるのだそうだ。便は出ているのに残便感は消えないので大量の便秘薬を使っても症状がとれない。こういう人は、この直腸の部屋を切り取ってしまうと便秘がすっきり治ってしまうそうだ。

この番組では、便秘をしたときに便が出やすくなる排便の姿勢の指導をしていた。この姿勢をとると、S状結腸から直腸にかけての曲がりがとれて排便しやすくなるとのことだった。それは、洋式便器に腰をかけて、上体を前方に倒し、膝を曲げて足を後ろの方へ移して両方の踵を上げる姿勢だ。

どこかで見た姿勢だと思っていたら。ロダンの「考える人」のポーズだった。

「考える人」は便秘で悩んでいたのか。
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by tnomura9 | 2010-08-08 09:20 | 話のネタ | Comments(0)