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直観力その2

直観力とは、一見無関係に見えるいくつかの証拠からその背景にあるものについての適切な仮説を立てる能力であると定義できないだろうか。

このような定義のもとで直観力について考えてみるといくつかの特徴がみえてくる。一つは推論のもととなる証拠が一見無関係に見えるか、非常に少ないという特徴だ。普通の人間には雑音としか見えない材料を元に直観力のある人は仮説を作り出す。しかし、証拠の間の関連性が希薄なため、さまざまな仮説が適用できる。直観力のある人は、その様々な仮説の中から一瞬にしてもっとも適切な仮説を見つけ出すように見える。

二つ目は、仮説の立て方の特徴だ。一般に、直観は論理を飛び越えて一気に正解にたどりついているように見える。仮説の作られる時間も一瞬で、論理の連鎖を積み重ねることによって結論を出すというようなやり方ではない。証拠から仮説を導き出すのは、一種のパターン認識による。様々な有り得る仮説のうちで、証拠のパターンに最も適合するような仮説が論理的な思考を経ずに選択される。

こう考えると、直観力は芸術の感受性と似ているところがある。仮説と証拠の間のバランスとか全体としてのまとまりとか、あるいは仮説の適合性についての美的感覚のようなものが判断の根拠になる。

直観力は、先天性のもので努力で獲得できるようなものではないようにも見える。しかし、美しいものを多く見ていると自然にセンスが良くなるように、直観力も直観力のある人の意見を聞いているうちに自然に培われるものなのかもしれない。
by tnomura9 | 2009-06-25 17:49 | 考えるということ | Comments(5)
Commented by のぶし at 2009-06-26 01:32 x
「直観」が生まれる無意識の思考で使われる道具ってのは
原始的なメタファーなような気がします。
ただ、それまでの近似のメタファーに翻訳する作業は雲を掴むような、内面をモニターするような感じできついです。
まあ、シンプルに理解できた時が快感なんですけどね^^
Commented by tnomura9 at 2009-06-26 05:46
のぶしさん、コメントありがとうございました。
メタファーについての御指摘ありがとうございます。たしかに、メタファーは抽象的なものをより直観的な具体的なイメージに翻訳する有力な方法ですね。スコラ哲学でメタファーが多用されたため、ホッブズやロックは否定的だったようですが(Wikipedia)、最近の認知言語学では抽象的な概念を理解する根本的な概念操作であると積極的にとらえる立場もあるようです。『認知文法のエッセンス』に挙げられていた例ですが、「これらの結論に到達した」というなにげない表現も旅のメタファーに基づいています。御指摘のように、直観的な思考能力を考える上で、メタファーは重要な要素だと思います。
Commented by のぶし at 2009-06-27 13:45 x
質問なんですけど、いいですか?
現在、メタファーなどをカテゴリー化したいと思っているのですが
区分けするための整理された概念がパッと浮かばない状況です。
概念さえ整理されていたら、経済的+入力で経済的入力、技術的+実現性で技術的実現性というように半自動でカテゴリー化できると思うのですが概念の数が多いので困っています。
もし、分類の手法または支援ソフトをご存知であれば教えていただければ有難いです。

P.S アルキメデスは分類とコモンセンスを重視したらしく(ttp://sig.media.eng.hokudai.ac.jp/~kabura/phdabstract.html)なるほど、やっかいです^^
Commented by tnomura9 at 2009-06-28 08:49
のぶしさん、コメントありがとうございました。
メタファーのカテゴリー化というのは、たとえば、旅のメタファーが、どんなところで使われてるかということを調べたいと思われているのでしょうか。紹介していただいたホームページの記事も、「好き」とか「嫌い」という感情を表すキーワードでデータマイニングする方法のようですが、データマイニングの方法についてはよく知らないので、よいアドバイスができません。また、分類を機械的に行いたい場合は、連想で動作するデータベースがあるような記事をみたことがあるような気がするのですが検索できませんでした。申し訳ありません。
Commented by のぶし at 2009-06-28 11:33 x
分かりいくい質問の表現でしたね。
お手数をおかけしました。
すみませんでした^^;

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