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スキーマと抽象度

スキーマとは「概念」の事例の共通要素を抽出するという性質をもう少し拡大したものだ。

「柴犬」と「チワワ」という事例に共通する性質を抽出して「犬」という概念が作られるが、「火を焚くと煙が立つ」というような場合の要素「火」と「煙」の共通部分を抽出しても「概念」にはならない。しかし、「火」と「煙」という事例の共通点にこだわらず、「火」と「煙」は分かちがたく存在するという意味で、「火と煙の不可分性」として「スキーマ」にまとめることができる。またさまざまな概念もスキーマの一種と考えることができる。スキーマは概念の抽象化の働きを拡張したものともいえる。

スキーマは概念のようなきれいな階層構造を作ることはできないが、適用範囲が広くなる。そうして、事例からの「抽象化」の働きを「スキーマを作ること」と定義すると、抽象化というつかみどころのない用語をもうすこし直観的に取り扱うことができる。

すなわち、抽象化を「スキーマを作ること」と定義すると、抽象的なスキーマの抽象度を数値化できる。たとえば、「柴犬」のような概念は、目に見える犬を一段階だけ抽象化したものだから、抽象度は1である。また、スキーマが他のスキーマを抽象化して作られるときは、元となるスキーマのうち抽象度の最も高いものに1を加えたものがそのスキーマの抽象度となる。たとえば、「犬」の抽象度は2である。

この抽象度はあくまでも概念的なもので厳密化することはできない。たとえば上の例の「犬」にしても、個々の犬の個体から抽象したものと考えれば、抽象度は2ではなく1である。ただ、こういうふうに抽象度を定義することによって、ある抽象的な概念がなぜ理解できないのかがわかる。つまり、その下位のスキーマのどこかで理解できていない部分があるのだ。

概念あるいはスキーマの抽象度を検討することで、高度に抽象的な概念も特別の人だけが理解できる聖域のようなものではなく、誰でも積み重ねさえすれば到達できるものだという見通しと、それを達成するための戦略が見えてくる。
by tnomura9 | 2009-04-21 08:24 | 考えるということ | Comments(0)
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