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戦わずして勝つ

兵法の書である孫子には、最も良い勝ち方は戦わないで勝つことだと書いてある。戦争に勝つための兵法の書が戦わないことを勧めているのだから面白い。

いったん戦争を始めると、産業や財政や人材に及ぼす負の影響は避けがたい。諜報活動や調略をつかって、相手を自己崩壊させれば、戦わないで勝利を手にすることができる。戦争に勝つということを抽象化するとそれは戦争をできるだけしないことだという結論になってしまう。

戦争の遂行のためには、前線の戦略も必要だが、もっと重要なのは戦争を継続するための兵站の確保や戦争を終わらせるための外交戦略だ。いかに戦闘に勝利するかと考えることが具体的思考なら、兵站や戦後処理も含めて戦略を立てるのが抽象的思考になる。大事なことは、個々の戦術を超えて、戦争に勝つという本質を抽象して考えることなのだ。

中島敦の「名人伝」には、弓の名人がついには弓を見てそれが何か分からなくなったという古事が書かれている。本質を追究しているうちに、具体的な思考からは思いもよらない解決法に到達するのが抽象的思考の力だ。
by tnomura9 | 2009-04-08 07:21 | 考えるということ | Comments(0)
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