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思考実験

一般相対性理論を数式を使わないで説明するという本を読んだときに、アインシュタインのエレベータの話が出ていた。アインシュタインが一般相対性理論のアイディアを思いついたときの思考実験らしい。

それは、こんなような内容だったと思う。地球に向かって自由落下をしているエレベータの中の人は、自分が無重力の世界にいると思うに違いない。重力の影響のない世界では光は直進するはずなので、このエレベータの右の壁から左の壁へ進む光は直進しているように見えるはずだ。ところが、このエレベータを地上から観察している人は、右から出た光が左の壁に移動するころには、左の壁が落下しているので、光は曲がって進んでいるように見えるに違いない。したがって、重力場では光は曲がるのではないだろうかということになる。

また、等しい加速度運動をしているロケットの中の人は自分が受けている力が重力によるものであるといわれても区別がつかないだろう。それでは、重力と慣性力は同じと考えてよいのではないだろうか。

これらの思考実験をきっかけに、リーマン幾何学をモデルにした、一般相対性理論が構築され、重力とは空間のゆがみであるという有名な結論も導き出されたということだった。

抽象的な数式の羅列をみるとため息がでるが、上のような思考実験ならわかりやすい。そうして、複雑な数式も上のような現象を数学の言葉で表現しているだけなのではないだろうか。このようなわかりやすい話から、ブラックホールや、時空のゆがみや、ビッグバンの話が生まれてきたのかと思うと不思議な感じがする。

すべてのものを思考実験で説明しきることはもちろんできないだろうが、言語を使わないイメージによる思考実験が、この世界を深く理解するために、ときに有力な武器になるようだ。あまり勉強せずに野山を駆け回っていたような人が突然の猛勉強ですばらしい結果を出したというようなことはよく聞くが、イメージを使った脳内シミュレーションの力が知らず知らずのうちに育っていたのかもしれない。脳のシミュレーションコンピュータとしての機能はなかなかのものなのだ。

また、哲学というのも単に理屈っぽい人生訓というわけではなく、このような脳内シミュレーションの成果を含んでいる宝物かもしれない。

アインシュタインのようには行かないだろうが、暇なときにイメージによるシミュレーションをやってみるのはよい訓練になるような気がする。
by tnomura9 | 2009-04-04 00:08 | 考えるということ | Comments(7)
Commented at 2009-04-05 02:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by tnomura9 at 2009-04-05 10:00
normal さん、コメントありがとうございました。
メタ何々という言葉はよく聞きますし、論理を記号化することで記号論理学ができるわけですが、その記号論理学自体も構造を持っているのでその構造を記述するのがメタ論理学だという説明も見たことがありますが、どうも、私にはこのメタというのがはっきり理解できていないようなのです。メタという語はアリストテレスの一群の書物が「自然、後」という意味のメタフィジカから来ているとWikipediaにありましたがそれでもよく分かりません。構造主義についても、ソシュールの『一般言語学講義』小林秀雄訳をよみましたが、シニフィエとシニフィアンの違いや、語の意味が他の語との関係性において成立しているなどの主張が興味深いと思いましたが、理解できたという自信はありません。個人的には誰誰の方法によってというより、自分自身が理解できる範囲で積み重ねていくしかないのではないかと感じています。内田樹さんについては、「内田樹研究室」のサイトを見つけましたので、読んでみたいと思います。
Commented by tnomura9 at 2009-04-05 10:02
追記です。小林秀雄さんではなく、小林英夫さんでした。失礼しました。
Commented by tnomura9 at 2009-04-05 17:04
追記です。normal さんのコメントの「科学と哲学を包含したメタとしての構造主義」について考えてみました。科学と哲学の根底にある知識の構造に注目するという意味であれば賛成です。真理にアプローチする方法として、個々の現象よりもその相互関係の構造を知るということが大事ではないかと思います。ただし、それを構造として単に抽象するだけではなく、それから、何らかの活用法が現れるような、実効的な抽象化が必要ではないかとも思います。単に理解するだけでなく、その理解によって新たな展開が生じるような抽象化です。昔の名著を読んでも意味が分かりませんが、その解説を読んでもさらにわからなくなることがあります。それでも、さまざまな解釈を発生させながら名著として生き残っているということは、そのなかに何かが隠れているのではないかと思います。それぞれその道の碩学の人たちが力を尽くして探求されているところに、素人の私がちょっとのぞいても理解できるものではないでしょうが、それでも、それらを読みながらあれこれと考える楽しみはあります。
Commented by normal  改め のぶし at 2009-04-21 00:16 x
難しいですよね。僕も読んでもわかりません^^;
ただ、日常生活で無理にでも活用するようにしたら感触は掴めてくるようになりました。頭の中に、もやもやとした抽象化されたものがあって、実生活で具象化するみたいな感じかも。
新たに始めた複数のブログも自然とそれを反映させているようになってます。

生産技術的ブログ ttp://ameblo.jp/77855777/
生産物的ブログ ttp://ameblo.jp/88855797/day-20090420.html

あと、独りでやっていると客観視できないし記憶にも残りにくいので
是非遊びにきて感想きかせてきださい^^
Commented by tnomura9 at 2009-04-21 08:01
のぶしさん、コメントありがとうございました。
抽象的な概念は実際に使ってみることで理解できるというのは面白いですね。プログラムが読めないときは一旦使ってみると読めるようになるのに似ていますね。
Commented by のぶし at 2009-04-21 08:56 x
抽象的概念は慣れれば何にでも応用可能なのでどんどん使っていこうと思ってます。家事や掃除やギャグに対してだと安心して失敗できますし^^
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