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ループ量子重力理論

2009年5月号の『ニュートン』に時間と空間の最小単位があるという「ループ量子重力理論」の解説が載っていた。それによると、空間はプランク体積、時間はプランク時間という最小単位があるそうだ。この時空はデジタルだったのだ。

空間と時間に最小単位があれば、「ある点の隣の点」や「ある時刻の隣の時刻」が存在するので、時空が無限に分割できることを仮定した、ゼノンの「アキレスと亀のパラドックス」が解決できる。古代の哲学の難問がこのような形で解決されるとしたら面白いことだ。

デモクリトスの「原子論」の場合も、原子の存在が科学によって証明されたし、身体感覚と論理と帰納的推論だけで構築された哲学の結論もあなどれないものがある。

ちなみに、「アキレスと亀のパラドックス」だが、足の早いアキレスと亀が競争しても、亀が先のほうの位置でスタートしたら絶対に追い越せないという理論だ。

つまり、スタートしてからアキレスが亀の位置に到達するために時間がかかる。その時間の間に亀は先ほどの距離ほどではないが先に進んでいる。そこでその亀の位置に達するためには、アキレスはまたある時間を使って移動しなくてはならない。しかし、その時間の間も亀は先に進んでいる。これが、永遠に繰り返されるので、アキレスは絶対に亀に追いつくことはできないという結論になる。議論自体には論理的な問題がないのに、実際はアキレスは亀を楽々と追い抜いてしまうのでパラドックスなのだ。しかし、空間と時間に最小単位のある世界であれば、無限に時間と空間を分割することはできないので、上の論法を使ってもアキレスは亀に追いついてしまう。
by tnomura9 | 2009-03-29 11:23 | 考えるということ | Comments(3)
Commented by あいら at 2012-05-29 01:16 x
ループ何とか理論を持ちださなくてもパラドックスでも何でも無いんじゃないですか?
アキレスに追い付かせないために時間の流れを無限に遅くして行ってるだけでは?
別に時空がアナログだったとしても人が走る程度の速度では一秒は無情に一秒で過ぎていき、速度と距離の方程式はたとえアナログでも無情にアキレスにカメを追い越させる

そりゃ追い付くまでをむげんにスロー再生にしていったらそりゃいつまでも追い付けませんよねってだけかと

パラドックスっていうかインチキ
Commented by tnomura9 at 2012-05-29 10:41
あいらさん、コメントありがとうございました。

ループ量子重力理論については、私も多分全く理解できないと思いますので、あいらさんの時空がアナログでもいいのではないかという疑問にお答えできませんが、ゼノンのアキレスと亀のパラドックスは、物が変化するという概念に何かおかしいところがあるのを指摘しているのではないかと思います。

変化を現代的に定量的に記述するのが微分積分の考え方ですが、その根底となっている極限の考え方にも同じような、納得できなさがあります。微分を計算するときに分母の値は限りなく0に近づきますが、0そのものにはなれません。

うまく説明できませんが、連続とか無限という概念にはもうひとつしっくりこないところがあります。

アキレスと亀のような寓話にも見える素朴な議論に、このような連続の腑に落ちない性質が端的に見えるのが面白いと思ったのです。

論理は目にみえないところを目に見えるかのように描き出すのがおもしろいところで、現実にアキレスは亀を追い越してしまうではないかというのとは少し違うような気がします。
Commented by tnomura9 at 2012-05-29 11:01
追記です。

>そりゃ追い付くまでをむげんにスロー再生にしていったらそりゃいつまでも追い付けませんよねってだけかと

これがアキレスと亀のパラドックスの核心部分で、単調増加的に無限に観測点を取ることができるということが、無限に追いつけないということに置き換えているのがインチキです。

単調増加的に無限の観測点を取ることができますが、観測点の値はアキレスと亀が並ぶ時点に届きません。

それでも、変化と連続に関してはそれだけで解決といえないような気がするのです。直観的な印象だけですが。
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