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アルカドリン

東京都神経科学総合研究所のホームページで、『難治性てんかんに伴う学習・記憶障害の病態メカニズムを解明』 山形 要人 副参事研究員という記事を見つけた。原著はNeuron の電子版に掲載されている。

神経細胞に電気刺激を加えると、アルカドリンという分子が発現し、これがN-カドヘリンという細胞と細胞を接着させている分子と結合すると、N-カドヘリンが細胞内に取り込まれてしまい、細胞と細胞の接着ができなくなり、シナプスが消失してしまうという。難治性てんかんにともなう、学習・記憶障害に関係しているのではないかと書いてあった。

海馬のシナプスには、N-カドヘリンやE-カドヘリンなどの接着因子が発現してシナプスの形成を支えているそうだが、それを細胞内に回収するメカニズムがあるということは、いったんできたシナプスを解消する働きが自然には備わっているということだろう。記憶の本体が動的なシナプス形成にあることは間違いないようだ。

最近脳科学の本をよく読んでいるが、その進歩に目を見張ると同時に、脳科学の成果を学習に利用するのはまだまだ道のりが遠いような気がする。分子レベルや神経のネットワークの解析やシナプスの振る舞いと、科学的な学習法をつなぐほどには、脳のメカニズムは分かっていないようだ。
by tnomura9 | 2009-02-26 07:46 | 考えるということ | Comments(0)
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