ネットをうろうろしていたら、『記憶が失われない突然変異体をショウジョウバエで同定』という記事を見つけた。
プロテインキナーゼA(PKA)というたんぱく質をリン酸化する酵素の活性が普通の半分しかないショウジョウバエの変異体は、一回の学習だけで繰り返し学習させたのと同じくらい記憶を保持することができるそうだ。 プロテインキナーゼというのは細胞内のシグナル伝達で重要な働きをしている酵素で、サイクリックAMPというセカンドメッセンジャーで活性化され、ほかの酵素をリン酸化することによって、その酵素を活性化する。その酵素の活性が落ちると記憶が保持されるということは、普通のショウジョウバエでは記憶を積極的に失わせる機構が働いているということになる。 ハエの記憶をどうやって調べるのだろうと思うが、ハエに匂いをかがせた上で電気ショックを与えると、ハエがその匂いを避けるようになる。100匹中何匹のハエがその匂いを避けるかで記憶の強さを測るらしい。匂いを避けるハエの数は時間がたつとともに少なくなっていくが、変異体のハエはなかなかその数が減らない。 とにかく、自然の中に積極的に忘れる機構が働いているらしいというのは、興味深い。何でもかんでも覚えているほうが偉いという社会は自然の英知に逆らっているのかもしれない。
by tnomura9
| 2009-02-23 22:26
| 考えるということ
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Comments(2)
ハエと聞くと気分良く思っていなかったのですが、生物として再考してみるととても興味深いということが分かりました。知らないからこういうことになるのですね。
どうしても「覚える」ことに重点を置きがちですが、そうでない視点が良いですね。
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tnomura9 at 2009-04-04 12:57
編集部 .K さん、コメントをありがとうございました。
今読んでいる本では、ハエの脳と人間の脳で基本設計はそう違いがないそうです。また、出所を忘れてしまったのですが、人間の脳の記憶容量は10テラバイトくらいだそうで、非常に大きいものの無限ではないようです。いらないものは覚えない工夫も大切なのでしょう。
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