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アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症の記憶障害と加齢による記憶力の低下の違いは、アルツハイマー型認知症の人は、自分が何かを忘れていたということに気づかないということだ。つまり、エピソード記憶の障害が顕著なのだ。これは、アルツハイマー型認知症の人のMRI所見で、海馬の萎縮が著しいこととも符合する。

今日見たテレビのシンポジウムで、記憶障害がかなり進んだ認知症の患者さんに告知をしたらひどく動揺したというシンポジストの発言があったが、おそらく、この患者さんはエピソード記憶の障害に比べ意味記憶のほうは障害が軽かったのではないだろうか。

fMRIによる解析で、4こま漫画を50本見せて、そのうちの一番目の画像と最後の画像が同じ4こま漫画に属していたかどうかを問う作業をしてもらったら、海馬特に左の海馬が強く活動していたそうだ。設問をランダムな2枚の画像を見たことがあるかどうかというものにすると海馬の活動はそれほど強くならなかった。海馬は記憶を定着させるときだけでなく、想起の際に記憶をエピソード記憶として再構成するときにも使われるらしい。

認知症の人は、海馬の障害によってエピソード記憶の想起にも障害があるために、自分の今ある状況がわからないなどの失見当障害があるのだろう。そのために、理解力がひどく傷害されているように見かけ上見えるが、意味記憶は保たれているために、告知を受けたときにその意味を理解でき、動揺したのかもしれない。

エピソード記憶については、最近の研究でBDNFという神経の栄養因子がかかわっていることがわかったらしい。BDNFのValがMetに置き換わったSNP(アミノ酸が一箇所だけ違う遺伝子変異)は、神経細胞から樹状突起や軸策に沿うBDNFの輸送が傷害される。このような変異を持った人は、エピソード記憶の成績が悪いが、言葉を覚える記憶力や文章読解力は正常らしい。AIST Today 2003.04 VOL.3-04

日常生活ではエピソード記憶と意味記憶を分けて考えることはあまりないが、両者の間の違いが問題になる場合もあるようだ。
by tnomura9 | 2009-02-22 21:04 | 考えるということ | Comments(0)
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