グラミン銀行

最近グラミン銀行に興味がある。

バングラデシュで始まったシステムで、最貧困層に無担保で低額のローンを貸し付けるがその返済率が99%で、借り手の60%以上が貧困層を脱出しているらしい。しかも、この高い返済率が30年も続いているということは、融資としてもかなり確実な方法といえる。

貧困層に無担保で融資をしたときの返済の保証となるのは、担保でも、高い利率でもなく、返済を確実にする債務者を見つける方法と、債務者の自己雇用を生み出す創造性だ。債務者が誠実でなければ融資を受けて利益を上げても返済しないだろうし、融資を元に仕事を作り出すことができなければ返済は不可能だろう。

それでは、どうやって優良な債務者を見つけることができるのだろうか。

ひとつは、融資が個人に対してではなく、5人のメンバーからなるグループに対して行われるということだ。融資は、そのうちの二人にだけなされるので、その二人が返済しない場合、あとのメンバーは融資を受けることができない。他のメンバーに迷惑をかけたくなければ、きちんと返済するしかないし、誠実でない人はメンバーに入れないようにするだろう。

ふたつ目は、行員が頻繁に債務者の住居にでかけ、彼女らの話を聞きその人生や人となりに精通するということだ。その段階で両者の間に信頼関係が築かれ、融資額や債務のスケジュールが最も適切となるように調整される。また、行員の目的が銀行の利益ではなく債務者の生活を改善することであることが確認され、信頼を受けることになる。

三つ目は、貧困者は生活を支えるだけの技術や経営力がないとみなされがちだが、実際はそうではないということだ。貧困の原因は、ワーキングプアに見られるように勤勉さと技術を持ち合わせながらも、経済の仕組みのために収益を上げられない状態にあることだ。なにかの、きっかけがあれば、報われない雇用や失業の状態から、自己雇用に移って利益を拡大再生産できるのだ。そのためには、ごく僅かの融資額からスタートすればよい。僅かの資金による僅かの利益を、拡大再生産することによって債務者は貧困から脱出することができるようになる。そのための企画は貧困者みずからがすでに持ち合わせていたのだ。

四つ目は返済が1週間ごとのため小額の返済で済むこと。まとまって返すのは心理的にも負担が大きい。小額の返済ならその垣根を低くすることができる。また、返済期限が1年という短期のローンであるということも重要だ。よい企画であっても10年先もそうかどうかは分からない。1年という短期で完済することで負債の額と情勢の変化による企画の利益変動の危険を抑えることができる。

これからの社会は雇用という形で生計を立てるのが難しくなっていくのではないだろうか。製造業にしても最近のロボット技術の進化をみると、いずれ工場から人間がいなくなってしまうのではないだろうかと思われる。ロボットは休まないし、病気をしないし、命令に従順だし、運営費も安く済む。人間に太刀打ちできるものではない。

したがって、これからは、会社に帰属することで給与を受けるよりは、創意と工夫で自己雇用しなければやっていけないのではないだろうかと思う。会社という大きいシステムは、あまり利益の上がらない隙間産業には興味を示さないだろう。しかし、自己雇用という立場からは会社が見限った利益は十分に自分の生活を支えることができる。

一時期サラリーマンの脱サラが流行し、悲惨な状況になった人も多いようだ。しかし、それは自分が精通していたものと違う職種を選び、現場を知らないまま頭の中で考えた構想で安易な企業をしてしまったせいなのではないだろうか。これに対し、マイクロクレジットの債務者たちは自分の現状をよく知っており、現場の立場からの自己雇用を行ったために成功することができたのだろう。まずは、失敗しても対応できるような非常に小さいものから始めることが大切なのだ。

現場からの発想と小さなことからはじめるという二つの点をよく考えれば、たとえ破産を経験した人であっても、再び立ち上がることができるはずだ。そのためのきっかけとなるのがマイクロクレジットのシステムなのだ。

マイクロクレジットを、あれは、バングラデシュという貧しい国だからできることで、先進国である日本には当てはまらないと一蹴するのではなく、これからの雇用形態の変化に対応した貸し手にとっても、借り手にとっても有力な融資の新しいシステムであると考える必要があるのではないだろうか。
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by tnomura9 | 2008-12-30 00:04 | 話のネタ | Comments(0)
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