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地図を見るように文書を読む

地図はそれ自体は一枚の紙の上に書かれた複雑な図形だ。地図が地理情報の情報源として働くのは、あくまでも、地図の読み手が頭の中に地図の情報を実際の地形のモデルに再構成したときなのだ。

文書を読む場合もこれと似たようなことがおきる。いま、ここにA4版の文書が一枚あるとする。遠くからその表面をちらりと眺めると、一枚の紙の上に、あるまとまりをもって配列された文字の集まりにしか見えない。そこから、何の情報も感じられない。

そこで、文書を読み始めるのだが、読み進むうちに、頭の中にその文書の情報がモデルとして再構成されていく。そうすると、先ほどは意味のない文字の配列として平板に見えていた文書を、要約が書いてあるところはどこか、重要なキーワードのある場所はどこか、細部について記述してあるところはどこかなど、立体的な構造を持ったモデルとして眺めることができる。

しかし、5分もするとモデルの魔法は消えて、もとの平板な文字の集まりとしか見えなくなるが、そのなかのキーワードをひとつ取り上げて、それが何を意味していたのかに思いをめぐらしていると、突然に文書全体の構成がよみがえってくる。

文書を読んで何が書いてあるのかさっぱりわからないときは、その文書の構成が立体的に見えているかどうかを確認してみるとよい。少なくとも、中心文や、文書の階層的な構造が見えてこないなら、その文書をもとに頭の中へモデルを作成するという作業が失敗していることを示している。

したがって、むやみに文書の冒頭から順に読んでいくということは文書の理解の効率を落としてしまう。文書は頭の中にモデルができないと理解されないからだ。
by tnomura9 | 2008-11-28 07:33 | 考えるということ | Comments(0)
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