勉強法のハウツー本を読むと、読書をするときに要点をつかむことの大切さが強調されている。
なぜ、要点が大切なのだろうか。それは、人間の意識が一度に処理できる要件が非常に少ないからだ。一度に把握できるのは要点だけで手いっぱいなのだ。もちろん要点だけでは、複雑な全体のシステムを把握することはできない。要点を出発点として連想を頼りに細部に分け入っていかなくてはならない。さらに、その細部を検討する場合も一度に意識に上る部分は非常に限られている。 人間の脳の情報処理の性質というのは、暗闇の中で、照射範囲のせまいスポットライトをあちこち動かして探索しているのに似ている。一度に多くのことを把握しているように思える場合もあるが、それは、そのようにして探索した情報を再構成して脳の中でモデル化しているからだろう。 学習法のカギは、この意識のワーキングメモリーの少なさと、脳の中でのモデル化について意識することだろう。とくに、このモデル化に際して汎用的なプロトタイプを持っている人は、新しいことに対する理解が早いのではないだろうか。 新しい知識を習得したとき、その知識のモデルを作るだけではなく、それと自分の脳の中にある他のモデルとの共通点がないかどうか。それらのモデルを抽象化した新しいプロトタイプができないかどうか検討してみるのは意義のあることだ。 こう考えていくと、多くの要素をもった複雑なシステムの全体を把握するためには、脳の中でモデルを作ることのできる能力が欠かせないことが分かる。数学を例にとると、俯瞰的なモデルを作成するためのトレーニングとしては、図形を視覚的なイメージとしてとらえる幾何学のほうが解析より数段優れていることが分かる。採点の便のために異常に計算を重視している現在の数学教育は、いびつなもののように見えて仕方がない。
by tnomura9
| 2008-11-17 17:41
| 考えるということ
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