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考えるということ

思考法について問題意識をもつ一番のきっかけは、「理解したいと思っていることが分からない、どこから手をつけてよいのかわからない。」ということだ。

このブログで「考えるということ」というカテゴリでいろいろ書きとめてきたが、段々と何をすればよいのか分かってきた。

知りたいと思っていることが分からないという状態のキーポイントとなるのは次の5つだ。

1.複雑に関連してあっているものは理解できない。 <--> 単純なものは簡単に理解できる。
2.知らないことを考えることはできない。 <--> よく知っているものとの関連でしか理解できない。
3.抽象的なものを取り扱うのは難しい。 <--> 具体的な例が思い浮かべば簡単だ。
4.すべての可能性について考え抜くのが難しい <--> 思い込みを避けて反対の可能性についても考える。
5.苦労して考えなければならないことは続かない。 <--> 繰り返し練習したものは楽に考えられる。

第1の点についてだが、複雑に絡み合っている知識を理解するのは難しい。そういう知識に取り組むときは、できるだけ単純なパーツに分解するか、あるいは詳細をブラックボックス化して、ブラックボックスの入力と出力にだけ注意を集中することが大切だ。因果関係を整理し、自分ではっきり分かると感じるほどのサイズに単純化することだ。

分析的な手法はほぼこの考えで行われている。最近は複雑系が問題になってきて、局所の因果関係を単純化するだけでは、全体の振る舞いが予測できないことが分かってきているが、この場合も、コンピュータシミュレーションを行うことによって、目に見える形で大域的な性質を調べることができる。これも一種の単純化と言えないこともない。

第2の点については、全く見たことも聞いたこともないことについて考えるのは不可能だ、未知のものを理解するときはすでに知っているものとの関連でしか理解することができないのだ。知りたいと思っていることのバックグラウンドにどのような知識が必要かを理解すれば、やみくもに挑戦して敗退するということもないだろう。

第3の抽象的なものを理解することの難しさだが、これであきらめる場合が多い。しかし、抽象的なものとは、数多い具体的なものの間の関係のうち、共通なものを取り出してきたものだ。だから、抽象的な概念について、一つでも具体例をあげることができれば、それを取り掛として、他の具体例についても考え、その「共通部分としての」抽象概念を理解することができる。一つも具体例を思いつけないような抽象概念を理解するのはあきらめたほうがいい。まだ準備不足なのか、あるいは、その概念自身に欠陥があるのかもしれない。

第4に、論理的な思考が大切だというが、論理的思考とは、「すべての可能性について考えつくす」ということなのだ。ところが、脳の特徴は、迅速な特徴抽出機能だ。人間を取り巻く環境からの情報は雑多で、その情報量もとてつもなく大きい。ロボットのフレームワーク問題にわかるように、情報や起こりえる可能性をすべて考慮していたら、まったく動けなくなってしまう。そこで、脳はその中から重要と思われるものだけを特徴抽出し、それに対して反応するというやり方で、フレームワーク問題を解決しているようだ。

しかし、これには落とし穴がある。特徴抽出には人間側の恣意が入りやすいので、思い込みになってしまう可能性があるのだ。特徴抽出がつぼにはまっていればよいのだが、外れてしまった場合行き詰ってどうしようもなくなることがある。この場合は、自分の判断の側に問題がなかったのかを検討する必要がある。論理性とは、風が吹いた時におけ屋がやったような恣意的な推論を積み重ねるということではなく、すべての可能性について徹底的に調べるということでなければならない。

第5に、疲れる思考は長続きしない。問題について考えるときに、よく使いなれた思考の道具を使っているときは楽に感じるものだ。受験数学の問題もよく見ると頻繁に2次方程式の解の公式を利用する場面が出てくる。このばあい、2次方程式の解について習熟していれば、難なく理解できるが、これがあやふやな場合いろいろな場所で困難が発生してしまう。基礎的な知識に対して何回も繰り返して習熟しておくことが、思考のエネルギーを節約するためのキーポイントになる。この場合、単に公式を暗記するだけでは効果が少ない。方程式から自分で計算をしながら解を導き出すということを繰り返すことによって、道具としての解の公式を存分に活用することができるようになる。

まとめると、単純化、連想力、抽象概念の具体例、論理性、基本に習熟することなどが、知りたいと願っているものに立ちふさがる壁を突破するためのキーワードになるだろう。
by tnomura9 | 2008-10-05 12:20 | 考えるということ | Comments(0)
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