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医師不足の本当の理由

地方の医療崩壊は深刻だ。管理人の住んでいるところも人口12万の都市なのに、県立病院と医師会病院の勤務医が半数に減ってしまった。おまけに、5年や10年で問題が解決するとは思えない。

地方の勤務医が減っているのは、労働基準法違反の時間外や夜間の勤務や、医療訴訟のストレスや時間あたりの賃金の安さが取り沙汰されているが、もっとも大きな理由は、地方の医療機関では医師のキャリアプランに不利だということだ。

医師の資格は以前は医師免許だけだった。ところが最近では、各科の学会で認定医、専門医、指導医などの資格が認定され、さらにそれは一定期間ごとに更新されなくてはならない。更新時も、症例数、学会出席、発表の回数などの要求水準を満たさなければならないし、その中には施設基準や指導者の資格などが基準として要求される。

この施設基準や指導者の資格が、地方の中核病院では整備するのが非常に難しいのだ。とくに指導的な立場の医師のキャリアを維持するための要因がない。最高位の指導医になっても、その資格を維持するためには、中央の施設基準のととのった病院を離れることができないのだ。

これでは、たとえ専門医や指導医の資格を持った医師が増えても、地方の病院には絶対に赴任できない。せめて、指導医の資格を取得した医師の資格更新は免除すべきだ。そうすれば、そのような人も安心して地方へ赴任できるだろうし、その医師を中心として認定医、専門医をそだてる環境を地方の基幹病院に作ることができる。

認定医や専門医などの資格審査は、良質な医療を求めるユーザの要求に答える形で医学会のほうから始まったのだが、そのことが逆に地方の医療の荒廃をひきおこしているという皮肉な結果になっている。

医師の偏在の問題は、医療システム全体を考えることから始めないと、単に研修医の枠を調整するというような制度的な方法では解決ができないような気がする。
by tnomura9 | 2008-07-02 00:53 | 話のネタ | Comments(0)
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