真っ暗闇で階段を下りたことがあるだろうか。あれば、あると思っていた最後の段がなくて転びそうになったことはないだろうか。人間は、歩くという単純な動作についても、外界のモデルを作り、予測しながら運動を調節しているようだ。言い換えると、まず、頭の中で自分の歩行のシミュレーションが先におこなわれ、その後で動作はそれをもとに行われているようなのである。
新しい知識を勉強しているとき、最初は雲をつかむようで分かったような分からないような気分だったのが、しばらく時間を置くと、突然はっきりと分かってあらゆるものが落ち着くべきところに落ち着いているような気がすることがある。これもひとつのシミュレーションだ、知識のモデルが頭の中にできているのだ。その証拠に、知識がこのような状態で組織化されていると、いろいろな状況でどういう風な変化がおきるだろうかということを予測することができる。 このような、知識のモデルをどのようにすれば、頭の中に効率的に作成することができるかということは分からない。しかし、アルキメデスの「ユーレイカ」ではないが、「あっ、分かった」という体験をするときは、このようなモデルが生まれた瞬間のような気がする。 たとえば、一点から発した二本の半直線に内接する半径 r の円を作図する方法を考えるとする。 内接円の中心は、角の二等分線上にあるから、まず、頭の中で角の二等分線を引く。そうして、その二等分線上を円の中心を移動させることで内接円がいろいろと変化していくのを想像しているうちに、その半径が r になるのはどんな場合かを考える。それは、直線の一つと円の中心との距離が r である場合だ。 そこで、今度は直線との距離が r になるような点の軌跡はどうなるのかを頭の中で実験してみると、突然それは、直線との距離が r の平行線であることが分かる。それなら直線の一つから垂線をひき、直線からの距離が r の垂線上の点を通り直線と平行な線を引けばよい。この平行線と先ほどの角の二等分線との交点が求める円の中心になる。 また、何かの本で、「アインシュタインが重力で光が曲がるのを発見したのは、自由落下するエレベーターの中で直進する光の軌跡を外から観察したらどのように見えるかという思考実験をしたからだ。」というのを読んだだことがある。 最近はコンピュータシミュレーションで、仮想現実的なゲームもできるようになったが、人間の脳コンピュータも、微分方程式なしでこのようなモデルを作ることのできる優秀なシミュレーションプログラムを持っているようだ。
by tnomura9
| 2007-05-21 07:34
| 考えるということ
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