思考力は大切だが、世の中にはいろいろな思考力がある。文系の思考力があり、理系の思考力がある。交渉ごとを纏め上げる思考力と数学の定理を発見する思考力はまったく別のもののように思われる。しかし、これらは、やはり、思考力というひとつの範疇の中に属すると考えられている。それでは、一体思考の本質とはなんだろうか。
思考力の例としてよく挙げられるのが、将棋や囲碁だ。自分がどういう手をとったときに相手はどう対応するかということを予想し最も有利な方法を考えて決断する。 しかし、もっと単純な形で思考というものの性質を見せてくれるのが、Windowsのおまけについてくるフリーセルという一人遊びのトランプゲームだ。だれでも一度は遊んでみたことがあると思うのでルールの説明は省略するが、これが、思考というものの性質を目に見える形で表してくれる最適な例のような気がする。 ゲームの目的はトランプのカードを一定のルールで重ねていき、全てを上のスタックに挙げてしまうことだが。このゲームを続けるには、必ずどれかのカードを移動させないといけない。一枚または一重ねのカードを移動するたびに、ゲームの状況は変化する。あるカードを動かしたときどういう状況が発生するか推測し、それが手詰まりになってしまわないように判断しながら、次々にカードを移動させていくのだ。 つまり、思考の本質とは、思考の対象に操作をくわえることで、目的とする状態をつくりだすことなのだ。その際、ある操作をおこなったら、対象にどういう変化が起こり、その状態が望ましいものであるかを予測し、その操作を行うか否かを判断する必要がある。 結局のところ、思考は、 1) 思考の対象に加えるある操作を仮定する 2) その操作が起きたときにどういうことがあるかを推測する 3) その状態の変化が望ましいものであるかを評価する 4) 判断が好ましいものであればその操作を実行する。そうすると対象の状態が変化するので、1)の手順を繰り返す。 という、仮定ー>推測ー>評価ー>実行の手順をくりかえしているだけなのだ。推測や判断に背景になる知識や経験が必要なので、いろいろな種類の思考があるようにみえるが、本質は上の4段階の繰り返しだ。 人の思いつかないような仮定を見つけるのが創造的な思考だろうし、推測が正確なのが論理的思考で、評価が妥当なのが思慮深い判断で、実際に実行するのが決断力だろう。おのおのの段階で得手不得手があるだろうが、このように4段階に分けてみると、自分の思考力の癖のようなものがよく分かる。
by tnomura9
| 2007-05-18 01:39
| 考えるということ
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