入出力はあるけれど、中身が全く見えない機械をブラックボックスという。自動車や、家電製品などたいていの機械はブラックボックスだ。
中身の見えないブラックボックの特性を知るには、入力をいろいろと変えてみるしかない。アナログのフィルターなどは、入力にホワイトノイズを入れて、出力をフーリエ変換すると、入出力周波数応答特性を得ることができる。注意深く考えられた入力のセットを使うと、ブラックボックスの特性が過不足なく分かるいい例だ。 知識も一種のブラックボックスのようなところがある。記憶がどのようなメカニズムで機能しているのかまだ分かっていないからだ。参考書を一通り読んで理解した気持ちになってもなんとなく不安なのは、記憶がブラックボックスだからだ。 したがって、この記憶というブラックボックスをテストするのには入力を工夫しなくてはならない。記憶システムのための入力とは、質問だ。テストの出題者ではないので、普段、本を読みながら問題を作ったりすることはない。しかし、十分に考えられた質問のセットを同時に作成しておくのは、自分のためにも有効なのだ。 コーネル大学方式のノート法では、左側に余白をとってキュー領域をつくっている。ノートの本体は右側の本文の領域に取るが、本文の内容を想起させるようなメモを、左側のキュー領域に書くようになっている。このキュー領域には、特に、自分で作った質問を書くように勧められている。なんで質問なのか不思議に思っていたが、今日の記事を書いていたら、最も有効な方法だったのだと気がついた。やはり、先人は偉い。 また、質問のセットといったのは、学習した内容の順序にそった質問だけでなく、横断的でクロスリファレンス的な性質をもった質問も必要だからだ。知識を文書化するためには、立体的な構造を持つ事柄も逐次的な文章に変換して記述しなければならない。従って、参考書の順序に沿った質問だけでは不十分なのだ。いろいろな角度から学習した知識を眺める質問を作成することは、知識の構造をシークエンシャルにではなく立体的に理解することができるようになるためにも必要なことだ。さらに、著者も思っていなかったような切り口からの質問ならもっといい。 問題は、こんな読み方をしていたら、時間がいくらあっても足りないということだ。しかし、本当に大切な知識については、やはり、時間はかけるべきだろう。大量の情報をすばやく処理することも重要だが、基礎的な応用範囲の広い知識については、徹底的に時間をかけて深く理解する必要がある。 こう考えてくると、質問を作るというのは、試験の予想問題を考える以上の機能がある。本を読んだり、記憶したりするのと同じくらい、いや、それ以上に学習に必須の条件なのだ。
by tnomura9
| 2007-05-10 08:09
| 考えるということ
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