『「超」読解力』 三上直之著 講談社プラスアルファ文庫
この本は表題のネーミングで損をしている。 表題だけを読むとビジネスのハウツー物か、受験の現代文対策の本のようにしか見えない。管理人も最初はそう思っていて、さっと読み飛ばしていた。 今回書棚にあったのがふと目に留まったので、文章の構造解析の題材に読んでみようと思って手に取った。したがって、今回は少し気を入れて読んだが驚いた。 管理人が、本を読む技術とはこういうものではないかと漠然と考えていたことが、非常に明確に、簡潔に、しかも分かりやすく解説してある。この本は、間違いなく読解力についてのスタンダードになるべき本だと思う。 著者は読解力の三要素を、語彙力、文章を構造的に理解するための論理的思考力、背景知識としている。この本では、そのうちで文章の構造を論理的に読むための技術に焦点をあてて解説してある。 著者は、文章で主張していることは主題文であって、あとは主題文を説明したり説得したりするための説明文であるとする。この主題文を説明したり、説得したりするために、文章を書くほうはさまざまなレトリックの技術を駆使する。このレトリックのパターンを知っていれば、文章の著者の手の内や文章の論理構成が分かりやすくなる。 レトリックとしての論理展開の方法は、基本となる方法は三つしかない。それは、対立、並立、同内容である。 対立というのは、二つのものを対比させながら説明や議論を進めるやり方だ。この書き方の文章は、何と何が対比されているかをつかんで、その対比を意識しながら読んでいけば迷うことがない。 並立というのは、ある一つのテーマについて、「第1に ... 。第2に ... 。第3に ... 。」というようにポイントを並べて論述していく方法だ。並立は、使う側にとって、非常に便利な方法だ。ひとつのテーマを分割して焦点を絞り、それぞれに関して論述することで、話が漠然としたり、混乱したりすることを防ぐことができる。 同内容というのは、一つのことを説明したり主張したりする際に、表現を変えながら繰り返し述べていく方法だ。たとえば、まず手短に一言でキーワードだけを述べ(A)、その後で同じ内容を、具体例を使って詳しく説明し(A')、さらにもう一度同じ内容を短い表現でまとめる(A'')といったやり方をする。 文章がこの対立、並立、同内容のどのパターンをとっているかを意識しながら読むと理解が楽になる。このどのパターンをとるかを見破るのに目印として接続語に注目することが大切だ。また、文章の構造が対立のときは、接続語に<-->のような対立のしるしをつけ、並立のときは並立する内容の冒頭に丸数字をいれ、同内容のときは文章のブロックの周囲を枠で囲んで=で結ぶなどのマーキングが便利だ。 文章の読解力とは、作者の手管の構造を見破って、論理的に考える力のことだ。
by tnomura9
| 2007-04-13 12:59
| 考えるということ
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