若いころはギリシア神話が嫌いだった。高潔な英雄や心 優しい婦人たちが、気まぐれな神々の横槍で運命に翻弄されるのに我慢ができなかったからだ。こんな理不尽な神を持つ古代ギリシア人の人間性に疑問を持ったりした。
しかし、最近里中満智子著の漫画「ギリシア神話」全8巻を読んで考えが変わってしまった。古代ギリシア人のあくまでも現実的な態度に気がついたのだ。実際、若いときに我慢ができないと思っていた理不尽さは、ごく普通に見られることだった。 世の中のものを良いものと悪いものに分けて、良いものだけ得ようとすることの非現実性をギリシア人はよく知っていたに違いない。過酷な運命に翻弄されながらも、人間としての信義を貫いていこうとする神話の主人公に対するかれらの共感を感じることができる。 ギリシア神話の神々も、英雄もすぐれて人間的だ。強さと弱さが、高潔さと卑劣さが分かちがたく共存している。自分や他人の性格の複雑さに翻弄される人間のさまざまな悲惨な運命とその運命を生き抜く彼らの健気さがギリシア神話の魅力だろう。 ともあれ、こんな理窟をくどくどと並べずにさらっと面白い物語にまとめているところが古代ギリシア人の偉いところだ。
by tnomura9
| 2005-05-09 07:50
| 幸福論
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