日本の教育界でフィンランドメソッドというのが話題になっているらしい。OECDの学習到達度テストの読解力で2年連続フィンランドが1位になったため、その独創的な国語教育に注目が集まっているそうだ。詳しくは『図解フィンランドメソッド』 北川達夫著を読んだほうが良い。フィンランドメソッドの内容が必要十分に、コンパクトにまとまっていて、この本を読んだだけでもすぐに練習がはじめられるくらいだ。
独創的といっても、実行されていることはあたりまえのことだ。マインドマップを使って連想を視覚化し、発想を出しやすくする。日常的に先生から「なぜ?」という質問を発することによって、結果よりもそれの原因となるプロセスに注意を向ける。10数個のキーワードをもとに、できるだけ短い文章をつくらせることによって、きびきびした明快な文章を書く能力を養う。汎用的な型にそって物語りや、レポートを作成させることで、効果的な表現の構成法を身につけさせる。作成された文章に対し少人数のグループで、良いところと悪いところを10個づつ指摘してその理由を議論させる。グループでは議長を回りもちで決め、議論のルール、たとえば、「発言している人の意見は最後まで口を挟まないで聞く。」、「泣いたり怒ったりしない。」などに則って進行する。議論の成果を元に作品を推敲する。書き換えた作品をまた別のグループで検討させる。また、大勢の前で発表し、質疑応答させる。こういった議論の中で、資料を批判的に読む能力や、他のメンバーとのコミュニケーション能力が養成される。 おどろくのは、これを小学生がやすやすとこなしているということなのだ。フィンランドメソッドは、個人的な、また、集団的な創造活動の工程を意識的にシステム化したものだろうが、それを、小学生に実行させることができるほど大人のほうでも理解しているということだ。『かもめ食堂』を見たときに、フィンランドのアートのセンスに驚いたのだが、内気な国民性の中に深い知恵が隠されているのかもしれない。 もうひとつ気になったのは、議論を進行させるときのルールだ。「相手の言うことを頭から否定せず、どうしてそう考えたのかを理解するようにする。」など、相手の考えにオープンな態度、良いところは自分の考えと違っていても取り入れる公正な心が、議論の進行に伴って自然に身についていくのではないかと思われる。国語の読解の教育がそのまま全人教育にもつながっているように見える。 フィンランドメソッドが一時的なブームで終わってしまって欲しくない理由だ。
by tnomura9
| 2006-10-26 08:15
| 考えるということ
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Comments(2)
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h5y1m141 at 2006-10-29 11:58
私もフィンランドメソッド読んで、あういうことをまだ小さい子供のうちから行っているフィンランドという国に少し興味を持つようになりました
>フィンランドメソッドが一時的なブームで終わってしまって欲しくない理由だ。 私もそう思って、会社の人にもちょっとづつ宣伝してます
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tnomura9 at 2006-10-29 20:52
h5y1m141さん、コメントありがとうございました。
フィンランドメソッドは、考えるというとらえどころのない作業を、マインドマップ、ミクシ、フォーマットに沿った作文というシンプルな要素に分解して訓練しているところがすごいですね。それと、小グループの議論の際のルールが魅力的ですね。 実際、個人の小さい頭の中に入る情報は限られているのだから、どうしても共同作業というのは必要になってくると思います。日本の企業の成果主義のようなものは、コスト管理からだけ発想しているようで、時代に逆行しているような気がします。 未来派の組織術が、フィンランドや、ブラジルのセムラーイズムのようなところから発生しているのが面白いですね。
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