セムラーイズム 全員参加の経営革命

先日、本屋で、ビジネスコーナーの辺りをぶらぶらしていたら、平積みしてあった黄色の表紙の文庫本が目に留まった。

『セムラーイズム 全員参加の経営革命』というタイトルだったが、表題だけでは内容の見当がつかなかった。ぱらぱらと、ページをめくったら、従業員参加型の経営の本らしい。著者が、ブラジルの実業家で、リカルド・セムラーという人だった。著者がプラジル人というのが珍しかったので買うことにした。

読み始めてあっけにとられてしまった。内容は著者が21歳のときに、倒産寸前だった父の会社「セムコ」を引き継いでから、ブラジルで就職希望ランキング・トップの会社にまで育て上げた経営改革の道のりを記録した自伝だったが、その改革の内容が尋常ではないのだ。

従業員を小グループにわけ、資材の調達、ラインの設計、営業計画などの経営を積極的に委譲する。会社の財務内容その他の情報を閲覧自由にし可能な限り情報の透明性を高め、利益の配分や自分の給与まで従業員が決めることができる。縦割りのピラミッド型組織を廃止し、中間管理職を極力減らし、また、管理職間の水平的な交流を密にする。職階の階層は3層だけで、管理職同士の交流はもとより、上級管理職と一般職員との交流も容易に行うことができる。というより、管理職は必要に応じて新たに作ったり、廃止したり、他の職種に異動したり、流動的なのだ。また、従業員には、会社の経営に参画させるためにバランスシートの読み方などの経営知識を教育するが、必要な場合、従業員や管理職の独立開業を積極的に支援する。従業員が独立することによって、会社は人員削減と、信頼できるアウトソーシング先を手に入れることができる。厳格なピラミッド構造と比べると、とらえどころのないアメーバのような構造なのだ。もちろん、組織図などはどこにもない。

その改革の内容はここで一口にいえないほど多様で急進的だ。同心円型組織、サラリー自主決定制、部下による上司のパフォーマンス査定、社員の企業家としての独立を助けるサテライト・プログラムといった制度をみただけでもどうしてそんな会社がやっていけるのだろうと不思議な気持ちになる。

一言で言うと、徹底的に「非官僚的な」組織なのだ。

ほんとうにこんな会社があるのだろうかと「セムコ」のホームページを検索したらあった

セムコは確かに民主主義的な会社だ。経営方針や、管理職や、給与まで従業員の意向を反映できる。しかしながら、それは甘い職場ではない。能力のない従業員や管理職は自然に排除されるシステムになっている。また、このシステムの目指すところは、高度の効率化だ、現場からの要求に、すばやく、無駄なく応じることが要求される。人員削減を行い、情報機器を駆使した管理を行い、経営トップの意向が迅速に伝達されるピラミッド型の組織以上に、効率的なのである。

従来の会社が形だけのカンパニー制をとり、結局、同じ市場を会社内で取り合うことになったような権限委譲とは違っている。一見非常識なアメーバ型の組織は、徹底して効率的に会社内で情報を共有するように最適化されているのだ。ピラミッド型の組織では、異なった部署の間で連絡を取ろうとすると洪水のような文書と時間が発生するが、「セムコ」型の組織では、担当者が会って連絡を取ればそれで済んでしまう。文書の発行など必要がない。また、経営方針の決定なども上意下達ではないので、上級管理職の思い込みで誤った判断をしてしまうことが非常に少なくなる。

管理人が、最近の医療行政の混乱にみられるような、巨大な組織の抱える問題解決力のほころびを見るにつけ、組織の大きさや複雑さの適正度や、現場の実情にそった適切な経営判断や、情報の共有化や、人的資源の活用や、組織の硬直化を防ぐ方法について漠然と考えていたことが、20代の天才経営者によって既に見事に実現されていたのには驚いた。

そうはいっても「セムコ」の成功が、リカルド・セムラーという天才の舵取りがなかったら実現しなかっただろうということは間違いない。民主的な組織にすれば全ては解決するというような問題ではないのだ。民主的な組織が、適切な経営を行えるためには、微妙な舵取りが必要なのである。「セムコ」が、リカルドの手を離れて存続できるのか。アメーバ型の経営方式が、はたして、これからも増殖していき、21世紀型の経営の型のひとつとして確立されていくのかどうか興味のあるところである。
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by tnomura9 | 2006-10-01 17:43 | 話のネタ | Comments(1)
Commented by 中古車輸出で独立開業 at 2006-10-18 10:33 x
独立開業を考えてるんですよね
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