無限集合の全単射

無限集合では集合とその部分集合の全単射を作ることができる。例えば自然数の集合は、その部分集合の偶数の集合と関数 y=2x で全単射となる。どのような偶数2n に対しても自然数 n が対応するから全射で、自然数 n と m が異なるときは偶数 2n と 2m は異なるので単射になるからだ。

しかし、この自分自身の部分集合との全単射が可能であるという無限集合の性質は、満室の無限ホテルに新規の客を受け入れる話と同じで少々胡散臭い感じがする。

例えば、1から10までの整数を考えたときそこに含まれる偶数 2 .. 10 と上の関数で対応するのは 1 .. 5 だけで、6 .. 10 には対応する偶数はない。

n 以下の自然数について言えばそこに含まれる偶数との全単射を作ることができないので、任意の自然数 n 以下の自然数の集合についてはその部分集合である偶数の集合との全単射はない。これは n がどのように大きくなっても成立するから自然数全体の集合について、その部分集合との全単射は作ることができないといえないだろうか。

しかし残念ながらそれは、最大数を持つ自然数の集合については常に成立するが、最大数を持たない自然数全体の集合についても成り立つとは言えない。無限が入り込んだ段階で、おかしなことが起き始めるのだ。

偶数を自然数の部分集合と考えると、自然数と偶数の全単射に疑問を感じる。だが、偶数を自然数の部分集合と考えず、これは自然数とは別の集合だと考えれば、自然数と偶数の全単射は自然にイメージすることができる。自然数 1, 2 ... と偶数 2, 4, ... を並べて列挙すれば自然に 1 -> 2, 2 -> 4, ... という対応関係を理解できるからだ。

つまり、自然数と同じように列挙できる集合については、自然に自然数との全単射を考えることができる。偶数は自然数の部分集合ではあるが、それは無限に列挙できるという性質から自然数との全単射が可能である。この無限に列挙できるという性質は、自然数の再帰的な定義の再帰部分から発生する。自然数と偶数はその再帰的定義に整合が見られるのだ。

前回の記事で、無限集合には全てという概念を当てはめるのには少々問題があると言ったが、それは無限集合の定義が生成的な定義であるということから来ている。無限集合の全単射は有限集合の全単射とは異なり、無限集合どうしの生成規則の整合性を利用しているからだ。

無限集合の不可解な性質が、その生成的な定義からくると考えれば、自分の部分集合と自分自身との全単射が存在するなどという納得できない性質も理解できるが、それであれば、無限集合とその冪集合の全単射がどうしてできないのかという次の疑問が湧いてくる。しかし、それは次の記事で議論することにする。


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by tnomura9 | 2017-06-11 21:16 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)
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