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A proverb is ...

A proverb is the wisdom of many and the wit of one.

これは、イギリスの政治家 Load John Russell の格言で、「ことわざは万人の叡智であり、個人にとっては機知である」という意味だ。短い文だが、文法的に解釈すると結構複雑なことになる。

proverb (ことわざ) は1個、2個と数える事ができるので可算名詞だ。不定冠詞 a がついているので、どのことわざというのではなく、ことわざのうちのどれでも良いが一つを取り上げるという意味だ。従ってこの主語 a proverb は単数なので be 動詞は is が使われる。

wisdom は叡智という抽象的な概念を表す言葉なので抽象名詞である、これはまた不可算名詞でもある。抽象名詞には普通冠詞をつけないが、定冠詞 the がついているのでこれは一般的な叡智ではなく叡智の中でも特定の叡智を指し示すと考えられる。どんな性質かというと of mamy (多数の人の) 叡智である。many は多数の人を指す代名詞なので冠詞はつかない。

and に続いて the wit of one (個人の機知) であるが、文法的には the wisdom of many と同じだ。対句になっているので、a proverb の the wisdom of many という属性と the wit of one という属性が対比されている。wisdom と wit が many と one の対比で使われている。

以上のように文法的に解釈すると、たった1行の文の解釈がなかなか面倒なことになる。文法というルールで英文を分析すると一つの文でも多くの内容を含んでいるとも言えるが、少々わかり辛い。ところが、これは日本語の発想と英語の発想の違いとしてとらえるともう少しわかりやすくなる。それをやってみよう。

最初の A は不定冠詞だが、日本語には冠詞という語がない。つまり、すでにこの冠詞によってものを考えるという英語の考え方と日本語による思考との違いが現れているといえる。a という不定冠詞は1個、2個と数えることのできるものの一つをなんとなく取り上げてみるという感覚がある。日本語にはこのように数えることのできるものの全般という発想がないので訳さないが、英文の発想を理解するためには、この不定冠詞の意味をまず理解しないといけない。つまり、何でもいいが1個、2個と数えることができるものを話題に取り上げていると考えるのだ。

こう考えると a の後は当然可算名詞が来る。不定冠詞なので、可算名詞の集合の一つの要素を取り上げるという意味になる。強いて日本語に訳せば、「あることわざは」というふうになるが、日本語の「ある」という言葉の意味は不定冠詞の場合より定冠詞の the の意味のように特定のものを指す意味合いが強い。この時点で逐語的に英文を日本語の文に変換することが困難になってくる。a proverb という名詞句は「ことわざのどれでも良いがその一つを取り上げると」という意味になる。従ってそれに続く be 動詞は当然 is だ。

the wisdom of many の定冠詞の the も a と同じようにその単語自体に語感という意味がある。a の場合は多くのなかの任意の一つという意味があるが、the の場合は「多くの中の特定のひとつ」という意味があるのだ。

当然 the のあとは可算名詞になるはずだが、wisdom (叡智) は1個、2個と数えられない抽象名詞なので不可算名詞だ。それが the という定冠詞のあとに来るということは wisdom の意味になんらかの制限がかかるはずだ。of many でその予想が当たっているのが分かる。many には冠詞がついていないが、それは代名詞だからだ。代名詞の働きは、何かを指し示すという抽象的な作用だが、この場合の many は多くの人を指し示している。

and という接続詞には、A と B というような A と B を単純に対等に繋ぐ意味もあるが、A と同時に Bであるというような同時性を表す意味もある。上の格言では a proverb が the wisdom of many ではあるが、しかし、それと同時に the wit of one でもあるという意味に考えることもできる。この場合、the wisdom of many であることは確かなのだが、同時に the wit of one でもあるのだという、後者を強調しているように見える。

まとめると、a proverb ということわざのひとつをとりあげて、それは the wisdom of many つまり万人の叡智だが、しかし、同時に個人の機知 the wit of one として活用することができると言っているのが分かる。

英文法を学習するときに、可算名詞や不可算名詞、不定冠詞や定冠詞など日本語にない単語の性質が現れてくると、なんでこんな面倒なものを覚えないといけないのだろうか、意味が通ればいいじゃないかと思いがちだ。しかし、この複雑な文法は英語と日本語の発想の違いを端的に表しているのだ。

したがって、英文を日本語に翻訳するときは、英文の現象の切り取り方とその意味を知りつつ、同様の現象を適切に日本語で表現するという2重の作業が要求される。

こう考えてくると、ディープラーニングによるパターン認識だけで英語と日本語の本質的な思考方法の違いを吸収することができるのだろうかと疑問に感じる。本当に有効な機械翻訳のためには、世界の現象に対する英語と日本語の切り取り方の違いを取り入れたアルゴリズムを開発する必要があるような気がする。

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by tnomura9 | 2017-01-09 23:04 | 考えるということ | Comments(0)
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