ラッセルのパラドックスの記事リスト

1. ラッセルのパラドックスと自己言及

集合の定義からものの集まり {a, b, c, ... } を集合 A と考えることで、それまで想定していた集合の要素以外に新しい「もの」である集合 A が発生してしまう。また、述語 P(x) を充足する要素 {a, b, c, ... } を集めて集合 A であると定義した時に同時にそれらの要素とは異なる集合 A という新しい要素が発生する。

この要素に述語 P(x) を適用(自己言及)した時に A が P(x) を充足する、すなわち、P(A) が真になる場合と、A が P(x) を充足しない場合、すなわち、P(A) が偽になる場合が発生する。

この際に、集合 A が P(x) を充足しない場合は A の外延的定義と P(x) による内包的定義は一致する。しかし、P(x) を充足するどのような要素を集めて集合 A を作っても A が P(x) を充足してしまう場合、集合 A を作ると同時に A には含まれない要素であるが述語 P(x) を充足する集合 A が発生してしまうため、内包的定義では集合を定義することができなくなる。「自分自身を要素として含まない集合」という述語はその典型例だ。

自分自身を要素として含まない集合、例えば「犬の集合」のようなものを適当に集めて集合 R = {a, b, c, ... } を作る。このとき R は R の要素としては含まれない。なぜなら R = {R, a, b, c, ... } としてしまうと、R は自分自身を要素として含む集合になってしまうからだ。したがって、R = {a, b, c, ... } の要素には R は含まれない。しかし、まさにその故に R は自分自身を要素として含まない集合になってしまう。

しかし {a, b, c, ..., } が自分自身を要素として含まない要素「全て」の集合でなければ、このような集合は普通に存在する。自分自身が要素として含まれないにもかかわらず、自分が自分自身を要素として含まない集合という述語を充足するという形は普通にありえる。しかし、どんなに多くの自分自身を要素として含まない集合を集めて集合を作っても、その集合自身は必ず自分自身を要素として含まないにもかかわらず、述語を充足してしまう。したがって、述語を充足する要素「全て」を集めた「集合」はつくることができない。

その場合、P(x) を充足する要素の全体というものを考えることは可能だがそれは「集合」ということはできず「クラス」になってしまう。「クラス」を無理に「集合」と考えるとラッセルのパラドックスが発生してしまう。

2. 素朴集合論の有向グラフモデル

素朴集合論については、集合をノードとし所属関係という有向エッジでノードをつないだ有向グラフとしてモデル化できる。これは集合を集めた集合 A に所属関係という二項関係 Ψ(x, y) を導入したものと捉えることができる。このモデルでは集合 a (∈ A) の外延は {x | Ψ(a, x) = 1} で表すことができる。

この有向グラフによるモデルの最大の特徴は、集合 A の要素数では、集合 A のすべての部分集合を代表させることはできないということだ。すなわち、集合 A の要素の外延として定義できる集合 A の部分集合は、集合 A のべき集合の要素のほんの一部分のみである。すなわち、集合 A は集合を作る操作について自己完結的ではない。

また、この二項関係についての不動点定理 --- f(Ψ(x,x)) = Ψ(a,x) なら f(Ψ(a,a)) = Ψ(a,a) --- により、集合 A には「自分自身を要素として含まない集合の集合」を表す要素を見つけることはできない。

このように、素朴集合論におけるラッセルのパラドックスは有向グラフの性質として捉えることができる。

3. ラッセルのパラドックスの記事リスト

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内包的定義の問題点 自己言及性について

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by tnomura9 | 2015-07-19 18:37 | ラッセルのパラドックス | Comments(0)
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