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KISS

ウェブデザインやプログラミングの世界では KISS(Keep it simple, stupid.) という言葉がよく使われるらしい。同じことを表現するのなら単純で直截的な方法をとろうという主張だ。「オッカムの剃刀」を現代風に表現したもののように思われる。

学生のとき生物学の実習でパンジーのスケッチをするのに、できるだけ葉の少ないものを選んでスケッチして持っていったら、この花では代表例にはならないと再提出になってしまった。物事の本質を見抜いて単純化することは大切だが、単純化を目指すあまり現実にある複雑さをゆがめてしまっては何にもならないだろう。

概念の梯子は、段を上がるにしたがって抽象化され、多くの要素の共通因子となっていくため段々に単純になっていく。単純で抽象的な表現は様々な状況の中でも変化しない共通性を指し示しているのだ。複雑さの中の単純さは、そういう意味で力強い単純さなのだ。

こんなことを書いても何の方法論も見えてこないが、しかし、表面に見える複雑さの背後の本質の単純さとはなんだろうかと考えることが楽しいし、大切なのだ。

それでは本質とは何なのだろうか。それは、抽象化されたアルゴリズムだ。「再帰的定義」のような記号と記号の間の形式的関係なのだ。「犬が西向きゃ尾は東」の頭と尾の関係のようなものである。個々の現象の中に潜む「関係」が本質なのだ。ヒルベルト風のこんな考え方はゲーデルが粉砕したはずだという人もいるだろうが、記号の形式的体系が自己言及命題を発生させそれ自身の無矛盾性を証明できないにしても、「形式的関係」の重要さを否定することはできない。
by tnomura9 | 2005-11-12 00:26 | 考えるということ | Comments(0)
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