単純な双対の例

圏 C の射 f : A -> B が mono である条件は、任意の対象 C, 射 g : C -> A, h : C -> A について

f . g = f . h ならば g = h

が成立する事だ。ところで圏 C の双対圏(逆圏) COP を考えると、COP の対象は C と同じで、射の向きが逆になるから、COP の f, g, h に相当する射はそれぞれ、f' : B -> A, g' : A -> C, h' : A -> C となる。また、合成射 f . g に対応する COP の合成射は合成の順序が入れ替わるから g' * f' になる。

そうすると上の mono の定義の圏 COP における表現は、

圏 COP の射 f' : B -> A が「 mono の双対」である条件は、任意の C, g' : A -> C, h' : A -> C について、

g' * f' = h' * f' ならば g' = h'

が成立する事だということになる。これは 圏 C の射 f が epi である条件と同じになる。つまり圏 C の射 f : A -> B が mono である場合、圏 C の双対圏 COP の f の双対となる射 f' は epi であることを示している。したがって、圏 C の射 f が mono である事を使って証明された定理は、その双対圏 COP では、f の双対である f' が epi である場合にその双対となる命題が成立する事が分かる。

話が抽象的で分かりにくいので、まず、圏 C の射 f : A -> B と射 g : B -> C について、次の簡単な定理を証明してみる。

定理
g . f が mono であるなら、f は mono である。

証明
いま、h, k : D -> A として、f . h = f . k と仮定する。すると g . f . h = g . f . k である。一方 g . f は mono であるから h = k である。ゆえに f . h = f . k のとき h = k であるから、f もまた mono である。

この定理の命題を圏 C の双対圏 COP の命題に翻訳してみる。すると、f |---> f', g |--> g', g . f |--> f' * g', mono -> epi だから、

f' * g' が epi であるなら、f' は epi である。

圏 C と圏 COP は射の向きを反対にしただけだし、上の証明の内容をすべて双対に翻訳すると、定理の双対は圏 COP で成立する事が分かる。

ところで、圏 C に epi の射が存在すれば、圏 COP にはその双対である mono 射が存在するので、上の 圏 C における mono の証明は、圏 COP でも可能であるから。つぎの定理が成立する。

f' * g' が mono であるなら、g' は mono である。

これの双対を作ると、

g . f が epi であるなら、g は epi である。

という命題になり、これは圏 C における定理として成立する。蛇足だが、上の命題を圏 C で証明してみよう。

f : A -> B, g : B ->C, h, k : B -> D について、h . g = k . g と仮定すると、h . g . f = k . g . f である。一方 g . f は epi であるから h = k となる。h . g = k . g を仮定すると h = k であるから、g は epi である。

ちなみに、この証明の双対は次のようになる。

g' * h' = g' * k' と仮定すると、f' * g' * h' = f' * g' * h' である。一方 f' * g' は mono であるから、h' = k' となる。g' * h' = g' * k' を仮定すると h' = k' であるから、g' は mono である。

このように圏に関する定理の双対は証明しなくても定理となる場合があることが分かる。つまり、

g . f が mono であるならば f は mono である。

が定理ならば、その双対命題である、

f . g が epi であるならば f は epi である。

も定理であるということだ。
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by tnomura9 | 2014-07-20 14:12 | 圏論 | Comments(0)
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