圏論では射の中身もみえない。

今日の記事は参考書を土台にしている訳ではないので誤解が含まれているかもしれないが、双対について考えているうちに思いついたので書いてみる。

圏論と集合を比較する上でポイントとなるのが、圏論の external な立場だ。集合では集合の要素の振る舞いが重要な関心事になるが、圏論では対象の内部の要素については一切触れない。mono や epi などのように対象の内部が問題になる場合でも、それについては全て射の関係性で表現する。

最初は戸惑うが、対象の内部に立ち入らないで済むというのはなかなか便利で、慣れてくると、対象をひとつの点や丸のようにイメージするようになる。すると、関手の対象関数といっても、対象の丸と丸を結ぶ単なる矢印でイメージできるのが快適に感じられるようになる。その矢印がどのような写像になるのかなどと余計なイメージをする必要がなく、イメージ的にはただ単に対象と対象を対応づけるだけだからだ。

そうしているうちに内部の隠蔽ができるのは対象だけでなく、射も同じように考える事ができるのに気づいた。整数の集合が、2乗の関数で平方数に写像されるなどの関数の性質は、集合すなわち対象の要素が記述できなければ意味がないからだ。圏論では対象の中を覗く事はできないので、対象と対象を結ぶ射についても、その性質は隠蔽されているという事になる。

これの何が便利かというと、前回述べた「双対」のようなものも、集合の圏 Set の射は何かという事を考えたので、その双対圏の SetOP の射のイメージ作りがたいへんだったのだ。どうせ、射の中身は見えないのだから、射そのものについて考えればもっと簡単に双対の性質を考える事ができた。

たとえば、圏 C の射 f : A -> B の双対である圏 COP の射 g : B -> A を考える。また、h : B -> C の双対が k : C -> B であるとする。この場合合成射 h . f : A -> C の双対はどのようにして作られるのだろうか。

h と f の双対はそれぞれ k : C -> B と g : B -> A だからこれを合成する方法は g . k : C -> A しかない。そうして、h . f : A -> C と g . k : C -> A を比べるとこれは確かに互いに双対になっていることがわかる。このとき圏 C から 圏 COP への射関数T は T : h . f |---> g . k のような射の合成の順序を入れ替える操作になる。

これは、SetOP の射の実体はどういうものかなどと苦労してイメージを作るよりもずっと簡潔に考える事ができる。どうせ射の中身は見えないのだから、射の向きを反対にした場合どういう事が起きるかという事だけを考えればいい。向きを換えた射の中身を詮索する事は不要なのだ。

集合になれた考え方だとつい向きが逆の射はどのような関数なのだろうかと射の中身を詮索してイメージを複雑にしやすいが、射の中身も見えないのだと割り切ると別の考え方ができるようになる。圏論が分かりにくいと考えるのは、こういった対象や射の中身を見ないやり方がなんとなく頼りなく思えるからなのではないだろうか。
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by tnomura9 | 2014-07-17 07:49 | 圏論 | Comments(0)
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