プルバック pullback

プルバック pullback の定義は次のようになる。

定義
A -- f -> C <- g -- B について、A <- g' -- D -- f' -> B が次の条件(1)(2)をみたすとき、A <- g' -- D -- f' -> B は A -- f -> C <- g -- B の「プルバック」pullback と呼ばれる。
(1)f . g' = g . f' である。
(2)任意の E について f . h = g . k であるような射 h : E -> A, k : E -> B があるとき、h = g' . l, k = f' . l となるような射 l : E -> D が一意的に存在する。

まず(1)について見てみる。

pullback という意味は、うしろに引っ張るとか、弓を引くとか、軍隊を撤退させるとかいう意味らしい。数学の他の領域で使い始められたらしいがその説明を読んでも意味がわからなかった。したがって、何を後ろに引っ張るのかは謎のままだ。

名前の意味はともかく、元になっているのは f : A -> C, g : B -> C という2つの射で、それの pullback が g' : D -> A, f' : D -> B という2つの射であるようだ。

f : A -> C, g : B -> C については何の制限もない。codomain が同じ C である2つの射について考えているだけだ。したがって、問題は g' : D -> A, f' : D -> B がどのような射であるかということになる。それらの射は次の条件をみたしていなければならない。

f . g' = g . f'

これは D -> A -> C というルートと、D -> B -> C というルートが可換である、つまりどちらのルートをとっても上の合成関数が同じ値になるということだ。射 f と g の間には特に関連性はないが、g', f' をとることで上のような可換性が見られることになる。

こういう任意の射について、特定の射をとることによって、合成関数が可換になるというパターンは圏論にはよく出てくるようだ。前に述べた equalizer の場合も適当に選んだ f : A -> B, g : A -> B について適当な e : C -> A をとることで f . e = g . e となることを示していた。

(2)についても圏論の定義にはよく見られるパターンだ。

プルバックの場合 f . g' = g . f' が可換だが、f . h = f . k が可換になるような射の組 h : E -> A, k : E -> B は g', f' に限らない。しかし g', f' はその domain D と h, k の domain E の間で l : E -> D があり、h = g' . l, k = f' . l が可換になるというところが h, k と一線を画している。

こういう言い方をしていいのかわからないが、g', f' はそういう h, k の中で最大の規模の射であるといえるかもしれない。

equalizer にしろ pullback にしろ、射のみで構成された圏論の部品の1つだ。この部品を使うことによってさらに複雑なネットワークをもつ圏の構造を解析していくことになる。
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by tnomura9 | 2014-04-14 07:39 | 圏論 | Comments(0)
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