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何がわからないかが分からない。

前回の疑問点を付箋に書いて参考書のページに貼付けるという方法で、『圏論による論理学 高階論理とトポス』清水義夫著をよんでいるが、以前に全く歯が立たなかったのに、よくわかるようになってびっくりした。

その方法とは、参考書の本文を読んでいて分からないと思った事を75mm × 12.5mmの付箋に書き付けてそのページに貼付けていくだけだ。前回の方法と違って分からないと思った事はどんどん付箋にして貼付けていく。ページが付箋で埋まってしまっても気にしない。邪魔になったら疑問が解けた付箋から外していけばいい。それを繰り返しているうちに不思議に内容がよくわかるようになっていく。

管理人が考えるという事に興味を持ったのは高校生のときのトラウマが原因だ。数学が苦手でどんなに教科書を読んでも、問題集を解いても分かったという気がしなかった。難しい問題をすらすらと解く級友の頭の中はどうなっているのだろう、自分の勉強法とどう違うのだろうと不思議でならなかった。

調べ物で分かる事なら、根気よく情報を探していけば何とかなる。しかし、どうやっても取りつく島のない知識はどうしようもない。壁に穴を開ける方法が全くないからだ。

しかし、うれしいことに今回の読書でそれを打ち破る方法が見つかったと思う。要するに高校のときに数学ができなかったのは、
「自分が何が分からないのかが分からなかった」
からだ。

今回の読書で読みながら分からないと思ったことを付箋に書き込んで貼っていったら、次々に付箋が増えていく。しかし、自分が分からない事を次々に追いかけていくうちにどこかでその解答にぶつかった。それを足がかりにしてもう一度自分の貼付けた付箋の問題を見ると解けるようになっていたが、さらにまた新しい疑問と付箋が増えた。それを繰り返しているうちに付箋の疑問に全て答えられるようになった自分に気がついたのだ。

要するに木構造を探索するアルゴリズムをイメージすればその過程がわかる。これは以前の記事で紹介した『銀の匙』を徹底的に横道にそれて知識を探索しながら読むというやり方にも通じる物がある。

一目で分かる簡潔な疑問を次々に発し続けて、疑問に答える事ができるようになった時点でひとつ上の階層の疑問に戻るという再帰的なやり方が、結局は抽象的で難解な参考書を理解するためのもっともエネルギーのいらない方法だったのだ。

どんなに読んでも考えても理解できなかったのは、自分が何が分からないかが分からなったからだ。また、脳のワーキングメモリーに保存できる数は限られているので、疑問点が多すぎると頭の中で保持できない。そのため理解の混乱が起きたのだろう。また、疑問を付箋に書き込む事で記憶する労力をかなり減少させる事になる。付箋はいわばワーキングメモリのスタックの働きをしていることになる。

50年来の疑問が解消した気がするが、死ぬ前に分かってよかった。このブログを読んだ若い人がこのあっけないほど簡単な方法でどんどん先に進んで行ってくれるとうれしい。

追記

参考書を何回か読み返しているうちに重要なキーワードがはっきりしてくる。そうなると、そのキーワードに下線を引いておけば内容を容易に思い出せるようになる。この場合は付箋は外してしまうとページがスッキリして見やすくなる。付箋の数が減ってくるとそのページの内容をよく理解できるようになったことが分かる。

また、重要なコメントは整理して余白に書くとよい。最初はとにかく付箋を貼っていって、整理されたコメントだけを記録すべきだ。思いつきは付箋に、熟慮したコメントは直接記入する。

参考書を読むコツはいかに飽きずに何回も読み返すことができるかということだ。
by tnomura9 | 2014-03-16 18:09 | 考えるということ | Comments(2)
Commented by 自由びと at 2014-06-02 10:11 x


数学が分からない理由の一つに、言葉の数学的理解があります。
これ数学では、一つの言葉を日常生活とは、少々(時に大きく)異なった意味として、定義して使っています。

例えば「距離」という言葉では、以下ような違いがあります。

日常生活で、××から○○までの距離は……と言った場合と数学で同じ事を言った場合とでは、その意味が異なっています。

ここでの日常生活での距離は、数学では「道のり」であり、それは道路を走っての距離です。数学の距離とは、××と○○地点を直線で結んだ「最短距離」の事です。

以上のような、言葉の違いが意識されていないと、数学はとても分かり難い教科となってしまいます。

更に当然に、日常的思考法と数学的思考の違いも意識する必要があります。
数学の理解する上でのキーポイントは、その前提条件・仮定の理解なのです。
その前提条件・仮定の違いが、ハッキリと意識化されていない場合は、その状態で、その問題を理解するのは至難の技なのでしょう…

Commented by tnomura9 at 2014-06-02 12:55
自由びとさん、コメントありがとうございました。

言葉を数学的に理解するというのが、一番難しいですね。前提条件、仮定の日常的思考法との違いをはっきり意識化することが大切ですね。常識にとらわれずいろいろな方向からあれこれ考えることが大切だと思います。
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