ニューヨークの魔法使い

前回、突然に『アリーテ姫』が読みたくなったと書いたが、その訳は、『ニューヨークの魔法使い』シャンナ・スウェンドソン著、今泉淳子訳、創元推理文庫を読んだからだ。

この小説を一言で言うと、「ガールズ・ニューヨーク・ファンタジー・経済・ライトノベル」だ。

テキサス生まれの田舎娘ケイティが、刺激的なニューヨークに出てきて、田舎者の健全な常識を持っていたために、陰険な上司にいじめられる生活を続けていたのが、突然のヘッドハントを受ける。その会社MSIは実は魔法を販売している会社で、ケイティの田舎者故に魔法にかからない体質が買われたのだ。MSIは実は邪悪な反対組織からの攻撃を受けていて、それに対抗するために魔法に免疫性のあるケイティの能力が必要だという。

平凡な女の子が、都会に出てきて平凡な生活に悩んでいたのが、突然の転職の勧誘から、非日常的な事件に巻き込まれ、その中核を担う主役として活躍するというハリウッド映画的な筋書きだが、テンポの早い展開と、まわりを固める脇役の魅力で一気にラストのクライマックスまで読み進めてしまった。

平凡な主人公が、ふとしたきっかけで非凡な世界に巻き込まれ成長していくところとか、主人公の周囲を取り巻く魅力的な男性たちが皆主人公にぞっこんで一種の逆ハーレムを形成しているところとか、ラノベの仕掛けに一致するところも多い。

また、描写が視覚的で、テンポが早く、映画を見ているように感じるのは、ハリウッド流の劇の構成技術だろう。読みながら映画に親和性があるなと感じていたが、実際、映画化の話が始まったようだ。

しかし、面白いと思ったのは筋の展開ではなく、田舎の落ち着いた暮らしと、都会の刺激的な暮らしの間で揺れ動く主人公の気持ちや、同居の女友達との友情や、女性の目からみた男性の品定めなど、女性の目から見た都会の生活があざやかに表現されているところだ。翻訳者の文章も翻訳臭さを感じさせず読んでいてすんなりと物語の世界に入り込むことができた。

ファンタジー小説の形をとってはいるが、管理人には、ニューヨークのビジネスの現場で奮闘している若い女性と酒でも飲みながら会話をしているような気分だった。

男性の小説家の描くヒロインも魅力的だが、ときどき、本当の女性はどう感じるのだろうかと疑問に思ったりすることがある。女性の作家の描く女性はその点、リアリティを感じることが多い。それが面白くて時々女性の作家の作品を読んだりする。『アリーテ姫の冒険』を思い出したのはそのためだ。

しかし、やはり管理人にとっては女性は謎だ。魅力的だと思う部分もあるが、少々億劫だと感じることもある。男と女はやはり生物学だけではない違いがあるような気がする。それでも男と女しかいないし、飲み屋で若い女の子と話すのも悪いものではない。

この小説には魅力的なキャラクターがたくさん現れる。冷静沈着なCEO、イケメンで底知れないパワーを持ちながらシャイな研究者、イケメンを装うイケてないがやさしい人事担当の責任者、切れ者で仕事の鬼だが素朴さを失っていない弁護士等々。しかし、意外にも一番魅力的だったのは、美人で能力はあるが気分屋でプライドが高く、ケイティが最初に勤めていた会社でケイティを翻弄していた、マーケティング担当重役のミミだと感じたのは管理人だけだろうか。
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by tnomura9 | 2012-03-20 04:55 | 話のネタ | Comments(0)
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