松下幸之助著『道をひらく』を読んだ。パナソニックの創始者、松下幸之助氏のエッセイ集だ。一つ一つの随筆が見開きの2頁にまとめられていて読みやすい。どのページを開いても、そうだそうだと頷ける言葉ばかりで、松下幸之助氏が、素直で開かれた心の持ち主であったことを想像させる。
しかし、どの言葉ももっともな言葉ばかりだが、もうひとつ物足りない気がする。正論だが、はっと目を見開かされるような新奇性が感じられないのだ。どこかの古典にも現れていたような、すでにどこかで聞いていたような印象は拭えない。たとえば、聖書の「右の頬を打たれたら、左の頬も差し出しなさい。」というような、逆説や強烈な個性の力は感じられない。この本の著者が松下幸之助氏でなければはたしてこれほどのベストセラーになっていただろうかとも思える。 ところが、松下氏の言葉を自分が今直面している問題に照らして思い返して見ると、平凡だと思っていた言葉が、俄然、光を発しはじめる。現実の問題に直面したとき、平凡に振る舞うということがいかに大変で、かつ、実効性のあるものかが分かってくる。あたりまえのことをあたりまえに行うことこそ実は非常に非凡なことだったのだということが思い知らされる。 『道をひらく』に記されているあたりまえの言葉は、現実の経営においては、あたりまえであるからこそ力のある貴重な言葉だったのだ。
by tnomura9
| 2011-01-21 07:16
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