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理解するということ

学習の際に最も大切で、最も難しいのが理解するということだ。

理解するということを一言でいうと、システムを操作することができるというだ。機械であれば適切に操作し、故障の場合は修理することができること。法律であれば案件に相当する法律の条文を引用し適用させることができること。医療であれば的確な診断ができ、治療ができることだ。

システムには全体としての目的がある。例えばテレビであれば番組を受信して影像を移すことだ。システムの全体としての目的を知るということが理解の第一歩だ。

また、システムは複数の要素からなる内部構造を持っており、それらの間の相互作用で全体としてのシステムを形作っている。これらの個々の要素の相互関係を知って、システムの動作に適切に介入できることが必要だ。テレビの例では、電源を入れ、チャンネルを選択し、画像や音声の調整ができることがそれに当たる。

さらに、システムの内部構造は、階層性を持っている。テレビの場合、単なるユーザであればリモコンの使い方が分かっていればよい。しかし、テレビを設計する人はその電子回路の構造にも精通している必要がある。

このように理解するということは、システムの働きとその内部構造を知るということだと理解できる。

ところが、理解するということには、もう一つの重要な側面がある。それは、システムの行動や内部の要素の意味を理解するということだ。

意味を理解するということは、システムの構造を理解するということと同じように見えるが、少し違う。たとえば原子力発電所の構造を理解して、適切に動作させることができて平常時はうまく運転出来ていたとしても、何かのトラブルが発生したときには、それにどのような意味があるのかということまで理解していないと適切に対応することができない。失敗データベースには、システムの意味を理解していないことによるトラブル発生の例が多数見られる。

また、システムの意味を知るということには、そのシステムを多角的な視点で眺めることができるということが含まれる。肺を呼吸器という視点から眺めるのか、血圧管理の要素と観るのかで、肺というシステムの意味が全く変わってくる。

このようにシステムの理解には、適切に操作できるだけでなく、システムをどういう視点から見てその意味付けをするかという立場も必要だ。システムの意味を知るということを分かるように説明するのは難しい。しかし、システムの運営に経験を積むにつれて、その重要性が意識されてくる。

理解することはシステムの仕組みを知ることと、その仕組の意味を知ることからなっている。後者は単なる知識というよりはアートの要素が大きいので機械的な伝達が難しいが、学習するときに常にその意味を考えるという習慣をつけておくことが大切だ。
by tnomura9 | 2010-09-26 11:01 | 考えるということ | Comments(0)
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