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天国の門

『天国の門』という有名なパズルがある。

死者が天国へ行くためには天国の門を通らなければならないが、天国の門に並んでそれとそっくりな地獄の門がある。天国の門には天使の門番がおり、地獄の門には悪魔の門番がいるが、この門番は見かけ上はどちらが天使でどちらが悪魔なのか全く区別できない。死者はこの門番に1回だけ質問ができるが、天使の門番は本当のことだけを答え、悪魔の門番は嘘だけを答える。

例えば、死者が、「こちらの門は天国の門ですか」と訪ねても、天使の門番は「はい」と答え、悪魔の門番は「いいえ」と答えるので、その門が天国の門かどうかを知ることができない。

解答は「わたしが、『この門は天国の門ですか』と尋ねたとき、あなたは『はい』と答えますか?」と死者が尋ねると良いと言うことになっている。天使の門番は素直に「はい」と答えるだろうし、悪魔は「いいえ」と答えるはずなのでその逆の「はい」と答えるだろう。どちらの門番の答えも「はい」になるので死者はめでたく天国の門を知ることができることになる。

見事な解答だが、はたして、それでいいのだろうか。

もう一度悪魔の答えを検討してみると、あなたは「はい」と答えますかという質問に対して「はい」と答えてしまっている。「いいえ」と答えるつもりだったのを嘘をついて「はい」と答えたのだが、その答えが、「はい」とこたえますかという質問に対する肯定的な答になってしまっている。「『はい』と答えますか」という質問に対して「はい」と肯定した上で「はい」と答えているわけだから、これは嘘をつかなかったことになる。

しかし、悪魔は嘘しかつくことができないのだから、この状況で「はい」と答えるのは不可能だ。「いいえ」と答えても悪魔は嘘をつくことができないから、結局、悪魔の門番は「はい」とも「いいえ」とも答えられないパラドックスにおちいることになる。

スマートな解答が気持ちいい「天国の門パズル」だが、そうは問屋が卸さないようだ。
by tnomura9 | 2010-05-19 18:52 | 考えるということ | Comments(3)
Commented by 自由びと at 2014-06-04 10:59 x



ネットで<「うそつき村と正直村」のなぞなぞを知っていますか?>に、3パターン書かれています。
更に、「クイズ大陸」で「正直天使、嘘つき天使、正直悪魔、嘘つき悪魔 」に別パターンが書かれています。

それは、さて置き~

>あなたは「はい」と答えますかという質問に対して「はい」と答えてしまっている。「いいえ」と答えるつもりだったのを嘘をついて「はい」と答えたのだが、その答えが、「はい」とこたえますかという質問に対する肯定的な答になってしまっている。「『はい』と答えますか」という質問に対して「はい」と肯定した上で「はい」と答えているわけだから、これは嘘をつかなかったことになる。

↑~これは、私が今まで考えた事のない視点からの思考です。とても勉強になりました。

これは、もともとは、「わたしが、『この門は天国の門ですか』と尋ねたとき、あなたは『はい』と答えますか?」という一つの問題を、

① 私が『この門は天国の門ですか』と尋ねたとき(の嘘)、と、② あなたは、『はい』と答えますか(の嘘)、の二つに分けたから、なのでしょう~



Commented by tnomura9 at 2014-06-05 05:50
自由びとさん、コメントありがとうございました。

『うそつき村と正直村』のサイトをのぞいてみました。ご指摘の通りひとつの質問に2つの意味をもたせているのがコツですね。

最初のパズルの答えは、パラドックスを利用したものではなく、同じ質問にうそつきと正直が答えるときの真理表を組み合わせる事で答えを引き出しているようです。したがって、解答は明確で、パラドックスは発生しません。

2番目の問題は、確かスマリヤンが考案したもので、自己言及を利用したもののような気がします。しかし、この場合は嘘つきの答えはこの記事に述べたようにパラドックスになってしまいます。その場合でも、嘘つきが答えられないので、どちらが天国の門であるかは分かってしまいます。

3番目もスマリヤンのパズルだったと思いますが、ややこしくて分かりませんでした。
Commented by tnomura9 at 2014-06-05 06:02
追記です。
最初のパズルはうそつきと正直への問いが同じ言葉ですが意味は異なっています。うそつきには、嘘つき村から来たのかと問い、正直には正直村から来たのかと問うています。問いは同じですが、意味が異なっています。同じ村について聞いたのであれば、答えは出ません。ひとつの質問に2つの意味を持たせている所がご指摘のとおりだと思います。
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