土屋賢二著『貧相ですが、何か?』を読んだ。
この本の魅力は、逆説の面白さだ。冒頭のまえがきにはつぎのように書いてある。 本書を書店で手に取っている人は、おそらく本書を買うかどうかという問題に直面しているにちがいない。 読む方は、「熟考しても、熟考しなくてもいけないのか」と煙に巻かれたような気分になる。著者は哲学が本業なので論理的思考はおてのものだ。論理的にパラドックスに追い込まれるので読者はどこか変だぞと思いながらそれを面白いと感じるのだ。 しかし、論理というものは、使いようでどうにでもなるというような鷹揚な性質がある。ヒュームが看破したように帰納法では原因と結果をつなぐ論理的な必然性はないからだ。 著者は、この論理の逆説性を活用しながら、周囲の(多くが女性の)友人をこき下ろしながら、彼女らへの愛情を切々と述べている。全く素直でない人なのだ。 したがって、このような文章を読むときは論理性よりも視点のずれを楽しむことになる。この著者の文章が人気があるのは、そのような視点の転換を読者が楽しんでいるからだろう。 余談だが、視点の転換というかアイディアの斬新さについては、最近のライトノベルはすごいと思う。最近仕事が忙しくて、難しい文章を見るとめまいがしていたため、子供の読み終わったラノベやアニメやコミックばかり読んでいたが、そのうちに、ストレス解消ばかりでなく、新しい何かが起きているのではないかという印象をうけるようになった。楽しみがまたひとつ増えた。
by tnomura9
| 2010-04-19 08:37
| 考えるということ
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